Jリーグでも未完の「ポゼッション」と「サイド攻撃」の両立
この「ポゼッション+サイド攻撃」は男子スペインリーグのFCバルセロナに代表されるように、ポゼッション志向のチームが目指す究極の完成形である。攻撃には「深さ」と「幅」が必要で、それによってコンパクトになる相手陣形を引き延ばすことが可能になる。
近年の『歴史に残る世界最強チーム』と称されたジョゼップ・グアルディオラ監督時代のバルセロナは、両ウイングが最も高いポジションをとってオフサイドラインをコントロールし、中盤に下がってくる“偽センターフォワード”のリオネル・メッシが自由にプレーできるスペースを創出していた。
日本にもそのようなチームはあった。
名波浩を中心にした通称「N-BOX」を完成させた2000年前後のジュビロ磐田の黄金時代。遠藤保仁や二川孝広、橋本英郎に明神智和から構成される「黄金の中盤」による超攻撃的なサッカーでアジアも制した西野朗監督時代のガンバ大阪。チーム生え抜きの中村憲剛を軸に、風間八宏監督就任から現在に至るまでの川崎フロンターレなどなど。
Jリーグにも歴史に残るポゼッションサッカーを完成させたチームはいくつも存在した。そして、2011年に『FIFA女子W杯ドイツ大会』を制した、なでしこジャパンもこの系列に入るチームだろう。
しかし、これらのチームには両サイドにウイングを配置するようなサイド攻撃のイメージは薄い。逆に2列目に入る攻撃的なMFやアタッカー陣は、もともとのポジションとは違う逆サイドにまで移動して数的有利となる密集を作りながら攻撃を組み立て、サイド攻撃はもっぱら攻撃参加したサイドバックの仕事になる。
唯一『ポゼッション+サイド攻撃』が両立していたのは、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督と森保一監督時代のサンフレッチェ広島と、その“ミシャ”監督が指揮を執っていた時期の浦和レッズくらいだろう。
ただ、“ミシャ・システム”と言われる<3-4-2-1>は、攻撃時に<4-3-3>や<4-1-5>になるものの、守備時には<5-4-1>となる可変システム。サイドを担当するのはウイングバックのみである。もともとボールを支配する位置も自陣側が多いことや、ウイングバックが高い位置をとるのに時間を要する。よって、緻密に練り上げられたシステムではあるが、“王道”というよりは制限がある中で作られた最適解である。
そんな中、近年になってポゼッションとサイド攻撃を両立させ、完璧なシーズンを送ったのが、イングランドのマンチェスター・シティと言えるだろう。