バクスター監督から学んだ“論理的”な指導
――現在のシーガルズのサッカーはFWに起用される選手の特徴によって変化が出てくるようにも見えます。それは神野監督が現役時代にFWだったことも影響しているのでしょうか?
基本的にチーム全体の戦い方としては、そんなに変えているつもりはありません。
とは言うものの、個が変わるとその印象も変わるものです。例えば、中村(みづき)が出てる時と高橋(美夕紀)が出てる時では全然違う印象が出てくるのも当然ではあります。
――神野監督もサイドMF起用される時期がありましたが、「試合に出ること」と「FWの意地やエゴイズム」について選手たちに伝えることはあるのですか?
経験や実績もある(大滝)麻未にはそんなには言ってないです。シンプルに「ゴール前にいてね」くらいです。他の選手には感覚的な部分じゃなくて、だからと言ってロジック(論理的)に細かく伝えているわけでもありません。
ただ、僕自身はヴィッセル神戸でスチュアート・バクスター監督(※1)に出会ってサッカーを整理させてもらいました。何をどうすれば、何処へ行ける?スペースが出来る?ポジショニングができる?『こうすれば得点が奪える』という逆算をしてきました。
それを監督として選手たちに難しくは言っていませんが、ある程度は伝えていますね。
※1 スチュアート・バクスター:イングランド出身で主に北欧のクラブで手腕を発揮。日本ではサンフレッチェ広島でJ創設2年目の1stステージ優勝。その後、神戸で2度指揮を執る。世界中のクラブや代表チームの指揮を執り、65歳となった現在も南アフリカ共和国代表の指揮を執る現役監督。
――サイドMFで出場することに悔しさや抵抗感はありませんでしたか?
僕の場合は試合に出たかったので全くなかったですね。
マリノスではFWもサイドMFも両方やってましたが、(1996年から)神戸へ移籍してバクスターさんの下でやっている時はずっとサイドMFでした。ほぼFWでは使ってもらえませんでした。でも、そこで本当に凄く勉強になったんです!
当時は25, 6歳ぐらいでまだまだ凄く身体が動いている時期だったので、1人でドリブルしてシュートを撃つことも多かったんですが、バクスターさんからは簡単に言うと、「11人抜いてシュートを決めろ、なんて求めていない。サッカーは11人でやるスポーツだ。チームとしてサッカーをプレーすることで、違うところでパワーが使えるぞ!」と、教えられました。
どうすれば前を向いてボールを持てるか?シュートに関しても、どこで撃つか?ここで撃った方が確率が上がるとか。確率論ではないですが、中盤でドリブルしないことで、勝負所の局面でパワーを残しておく、というのもそうですね。
色んなことを論理的に教わりました。それが勉強になったことで、(1999年に)大分トリニータへ移籍してFWをやらせてもらった時に凄く活きました。
――その結果が1999年に創設されたJ2の初代得点王ですね!
そうですね!得点王になれたからではなく、確実に役立っていました。神戸でサイドMFをやっていたことは受け入れるとかじゃなく、むしろ全然楽しかったですから。