「守れるイラン」から「手堅いイラン」、そして「攻めるイラン」へ

しかし、その中で徐々にイランには攻撃のタレントが生まれてくる。サルダル・アズムン、欧州に渡ったジャハンバフシュ、アンサリファルドの成長で前線が一気に充実した。

また国内リーグからは左利きのヴァヒド・アミリ、「イランのイブラヒモヴィッチ」と呼ばれながらウイングになってしまったマフディ・タレミらも台頭する。

2018年のロシアワールドカップに向けた予選では4-2-3-1を主に使用し、イザートラーヒやアリ・カリミ(守備的MFの方)らをボランチに起用して手堅い戦いを見せる。

そして本大会のモロッコ戦ではそれから一転、プレーメーカータイプのウミド・イブラヒミを1ボランチ+アタッカーを5枚並べた攻撃的なシステムを使用。4-1-4-1というよりも、イブラヒミを攻守にどう活かすかということを考えた形だ。

さらにスペイン戦とポルトガル戦ではイザートラーヒを起用してガチガチに鍵をかけるような守備的なプレーも見せ、その結果がグループステージ1勝1分け1敗という成績になった。

カルロス・ケイロス監督は、何度も何度もイランサッカー協会と衝突を繰り返しながら、辞任を示唆しながら、数年をかけて「攻撃力がありながらも守れるイラン」を段階的に作り上げてきたのだ。それが今のイランの強みだといえる。

ユース代表やクラブチームにもそのエッセンスは少し注入されてはいるが、イランがもともと持っていた良さを生かすというものではないだけに、他のカテゴリへの影響は大きくない印象だ。