――デザインだけでなく俯瞰的に全て携わったのはなぜですか?
やらないと無理だな、と。例えば、僕がかかわったデザイン画をグッズ業者さんが作るとかだと、何回か着たらびろびろに伸びてしまったとか。そうなりかねない。
ファッションのブランドってデザイナーだけやっていいデザインをやっていただけじゃ生き残れないんです。僕は、多摩美術大学でデザインコンセプトの授業をやっていたりして、生徒にもよく言うんです。スキルが高いだけとか、デザインがいいだけでなく、全体を俯瞰できる力を養わないといけないと。
だから、ポスターもやって、沖縄のキャンプに参加して選手に会って…と。
――今、クラブグッズ全般として何が問題なのですか?
一番はJ1~J3全てのチームがオーダーできる環境になっていることです。なので、ジュビロならブルー、コンサドーレならレッドという色違いになる。欲しいというよりもこういうものが提供されているからチームで買い取って販売するという流通になってしまっている。
今までは、そういったルールが明確にあったのでクラブ側で自由に作れなかったというのもあります。ニューカッスルのバーの人たちみたいな「俺たちが着たいものを作らない」と商品って売れないと思うんです。
20年ぐらい前にコムデギャルソン入る前後の頃はファストファッションってださいイメージでした。今はH&M、ユニクロしかりファストファッションで成立してしまうし、ノームコアといってシンプルなファッションが流行りました。
洋服を買うという行為のハードルがぐっと低くなった。一方で、買う側の偏差値が高くなった。他にたくさん安くていいものがあるから、なかなか買ってくれないわけです。
そんな中で、Jリーグみたいに50チーム全部を平均的にやっていくという内容に限界を感じました。
――私たちも通販をやっていた経験から、展示会でテンプレートがあって、チームごとに色を分けているカタログなどを実際に見てきました。中にはJFL時代のSC鳥取のようにゲゲゲの鬼太郎とコラボしたりがありますが画一的なチームが多いです。
Tシャツ1枚1枚に意味があるということをやらないと利益が逆に出ないと思います。
今は上代も自由に設定することができます。ボディをしっかりしてデザインをちゃんとして…3-4割高くなりましたが、単純に高くなったら意味がない。(サポーター目線では)「相澤が来てモノの値段があがった。ギャランティーたくさんもらっているのかな」、となってしまう。だから、モノヅクリからちゃんとやっていかないと意味がないんです。
ちなみにギャランティは、さほどもらってないですよ。仕事ではありますが、それだけではなく、今は関わることでロマンを感じていますから。
――デザインはどのように決めているのですか?
選手が着たいものにしたいと思っています。三好選手がアントワープへ移籍するときにホワイトマウンテニアリングのTシャツを着てくれていたのですが、単純に好きで買ってくれていたと。
選手はオシャレな人が多いです。彼らがチームグッズを着たいと思えるのが一番だと思います。第一弾の撮影の時でも鈴木武蔵選手が気に入ってくれて、撮影の後もそのTシャツをよく着ているそうです。
――それは嬉しいですね。パリだとサッカーマフラーをするのがトレンドになった一方で、日本だとサッカーユニフォームを着たらださいとかいいイメージだけではありません。
若者の文化につながっていないというのが大きいと思います。本当はファッションが好きな人がサッカーを好きになることは多いんです。
だから、コアサポだけのものじゃないグッズを目指しています。例えば、鈴木武蔵選手ってすごいオシャレなんです。彼自身が「カッコいいから欲しい」と思って着ていたものをファンも欲しくなる。
そういう風にサッカー選手がなれれば一番いいなぁと思っています。それが続いた結果、札幌ではサッカーのユニフォームを着るのがカッコいいとなるかもしれません。