クラブとサポーターとの距離感

宮崎:「サカつく」は、街と一緒にクラブが強くなって、サポーターも一緒に育っていくゲームです。いくつかクラブにもお話を伺おうと調べているのですが、それぞれのクラブで付き合い方が違うんですよね。

矢野:私たちなりに、町の規模感が一緒とか、目指すスタジアムの収容人員が近いとか、そういうJリーグの経営者に勉強させていただいています。

例えば最近、松本山雅の社長にお話を伺った時に、なぜ24万人の街に平均来場者数が1万7千人を超えるようにまでなったのかということを聞かせていただきました。すると、どうも「サポーターが自発的にサポーターを増やす」という感じになったのだそうです。

これには驚かされました。うちはこの前、年間パスを持っている方に「スタジアムへもう一人連れてきてください。その人は無料で入れますよ」というキャンペーンをやらせていただいたんです。

これはクラブ側が仕掛けて、仕掛けられた側の非常に近しい人が頑張る、みたいなそんな構図です。もちろんサポーターの皆さんでも頑張っていただいていますけども、松本さんはちょっと違っていた。

――信州の辺りは真田幸村などの戦国武将がいましたけども、サポーターが松本城の周りにのぼりを持って集まると迫力がありますよね。そういう土地柄というか風土もあるのでしょうか。四国はのんびりしていますよね。

矢野:そうなんです。松本さんって、JFLの時に7,000人入っていたんですよ。地域リーグ3,000人、JFL7,000人。すごいですね。僕らは半分しか入ってない。

ただ、僕らは3,000人だけどもアットホーム的な雰囲気がある。ご年配の方も多いですから。おっしゃった通り、四国、愛媛県のちょっと独特のやわらかい雰囲気があるのではないかと思います。

――愛媛は四国のなかでも特にそういった雰囲気がありますよね。

矢野:その通りです。高知なんて、たとえば桂浜に行ったら、やっぱり“ざっぱ――ん”って波があって、あの海の向こうに何があるんだって、心がざわつきます。来島海峡は潮が速いところもありますが、それ以外は基本的には、穏やかだと思います。

宮崎:先ほど試合を観戦しましたが、横でちょうど老夫婦のお客さんが試合を見られていたんですよ。とてものんびりと奥さんのことを気遣いながら、でも選手がシュートを外すと「なんだよ!」とか言うんです。

後ろにいる年配のご婦人なんかも「FC今治!」という声を出している。それでも皆さん、静かに見ている。サッカーのことをすごい詳しい感じではないんだけどそれがとてもいい雰囲気で、これって僕はいくつか Jリーグの試合を見にいったなかでも独特だなと。子供の声が聞こえるゴール裏なんかも新鮮でした。

矢野:小さいお子さんもゴール裏応援団の大事な戦力として活躍されていますね。クラブ同様、まだまだ駆け出したばかりですけど、皆さん、自分ごととして楽しんでいただいていると思います。

宮崎:家族で来れるのはとてもいいなと思いますね。

矢野:今日は、ご年配の方やお子さんにとっては天候(取材当日は台風が接近)がハードだったので、その層がちょっと少なかったんですけど、そうでなければ三世代で来ていただいてる方も結構いますね。