再び新しいスタジアムが必要なワケ
宮崎:今治にはプロスポーツのような文化がなく、サッカーのカルチャーを根付かせるという土台をそもそも作り上げないといけないということに苦労されたとお聞きします。
私も今回、試合を観戦する前に町を歩いたんですが、今治は車を交通の便にしているところ多いですよね。するとなかなか人と人が接触するのが難しい。東京とか都市部だと、町の商店街ののれんのところにサッカークラブの垂れ幕とかがついてるんですけど、接触をどのようにされているのかが気になります。
矢野:おっしゃる通りで、何かここに行けばいつもみんなが集まっているみたいな場所はあんまりないですよね。そこに(スタジアムのすぐ近くにある)イオンモールができました。
宮崎:イオンモールすごいですよね。ちょうど今日、午前10時過ぎに寄ったんですが、車庫がいっぱいになってて。
矢野:人口15万人の町にできたのですが、雨が降った時に、子供と一緒に家から出て、ゆっくりできる場所が、ここしかないんですよ。
(取材日は)三連休の中日、お子さんがいらっしゃる方とか「何かやらないとまずい」と思った時にここに行けばどうにかなる(笑)。そんな感じなのだと思います。
宮崎:将来的にイオンモールのすぐそばにある空き地に新しいスタジアムを作るという構想があるようですけども、ここを中心として、今治の町にビジネスのモデルになる場所を作っていく、広げていくという感じなんでしょうか?
矢野:それこそ「サカつく」の世界ですが、J2なら1万人、J1なら1万5千人が必要というから(スタジアムは)作らないといけないですよね。個人的にはJ1であっても1万人で許してくれという感覚なんですけども、それに合わせて作らないといけない。
ただ、現在のスタジアムを増設するわけにはいかないんです。お金がかかりすぎてしまうので。ただ、新設する場合も簡単ではなくて数十億円はかかります。土地はお借りする方向でいま検討して頂いているのですが、資金については皆さまと協議しています。
そうすると収益を生まないといけない。収益を生むためには土日だけ、試合日だけでは駄目で、試合がない日も人々を呼び込み、何かおもしろいことを提供するための機能を持たせないといけない。
自治体がスタジアムを建ててくれるならそこを使わせていただくのですが、そんな簡単に進められる金額ではない。じゃあ自分たちで作るしかないって、そういう順番ですかね。
――5,000人収容の現在のスタジアムが開場したのは2017年8月ですが、岡田氏は2023年を目標として別の場所に2万人規模の複合型スマートスタジアムを作りたいとおっしゃられています。実現するとわずか6年ほどでの新しいスタジアムということになりますが、最初から“大きな箱”を作るという考えはなかったのでしょうか?
矢野:今治には、JFLの基準を満たすスタジアムがない、作らないとまずかったんですね。お金もないからまず身の丈に合ったものを作ろう、作るならJFL・ J3という2つのリーグに対応したものをまず目指そう、となりました。
とにかく岡田武史という人がスピード感のある人なので、普通だったら色々そういうふうに考えちゃうんですよ。でも彼は「いるんだから作ろうよ。じゃあお金集めなきゃいけねぇな」みたいな(笑)。
――岡田氏らしいですね(笑)。先に動いたことが結果的にプラスになることも当然あるでしょうしね。
矢野:そうですね。動いてみないとはじめて学べることもたくさんありますし、まず小さく動くとその小さく動いているということ自体を皆さんから評価していただいて、結果として、いろいろな皆さまとのご縁をいただくというところはあると思います。