チームを変えた新加入の2人
看板であるはずの3バックをあっさり取り下げたようにも思える。しかし片野坂監督は大分時代の1年目も年間通して[4-4-2]を採用している。
ここで重要なのは、自身のスタイルや哲学を貫くことが「カタノサッカー」ではないということだ。
自チームの戦力やリーグ内での力関係などを踏まえて戦術を調整する。1つ1つの試合では、「相手を見てサッカーをしている」。試合をこなすことは、「カタノサッカー」のケーススタディを増やすことに繋がる。
彼の算段では、J3では大分の選手達の個の能力で勝てるが、J2では厳しい。だから、戦術を緻密に準備していく。それがJ1昇格やJ1での躍進にも繋がったといえよう。
片野坂監督は、4-4-2を採用した理由に「強度」を挙げている。
緻密さよりもボールを奪ってダイレクトにゴールに向かうプレミアリーグのチームに似た強度の[4-4-2]は、1対1のデュエルに強い選手の存在あってこそ機能する。
象徴的なのは新加入のMFコンビであろう。
すでに2ゴールを挙げているブラジル人MFダワンは、自陣と相手陣両方のペナルティボックス近くでボールに絡める「ボックス・トゥ・ボックス」なMF。自身の憧れである元ブラジル代表MFパウリーニョのような得点力も兼備している。
元U20日本代表の主将MF齊藤未月も近いプレースタイルを持ち、リーダーシップも際立つ。2人のポジション(役割)は「ボランチ」ではなく、英国型の「セントラルMF」だろう。
ダワンは来日からの隔離期間、齊藤は長期の負傷離脱から来るコンディション不良によってチーム合流は遅れたが、2人が状態を上げて来てからは中途半端だったチームに軸ができたのである。