早期内定がもたらした恩恵とリスク
児玉は大学でも目覚ましい活躍を見せた。2019年開催のユニバーシアードに臨む全日本大学選抜に選出され、世界一に大きく貢献した。
だがクラブでは風間監督退任より状況が一転した。守備的サッカーを好むフィッカデンティ監督の就任により児玉は冷遇された。
2018年までにプロで9試合1得点成績を残した児玉だが、新監督が就任した2019年は特別指定選手に選ばれるも公式戦出場はゼロ。そして2020年は特別指定選手に選ばれなかった。
卒業後も名古屋で出場機会を得られず、プロ2年目の2022年に徳島へ移籍した。
監督交代により戦術の変化や求められる能力も変わるため、早期加入内定選手は新体制の構想外になる恐れがある。この児玉の事例は早期内定の危うさを示してくれた。
それでも児玉のケースは不幸中の幸いと、あるJリーグ関係者が吐露した。
「もし大学を中退していれば学歴は高卒になるから引退後のキャリア形成で苦労する。
彼は(名古屋から期限付き移籍した)相模原で印象的な活躍をしていたけど、大学でも結果を残していたこともあったから徳島へ移籍できたと思うよ。
もし退部して早期内定先に駆け込んでいたら、大変なことになっていたかもしれない」
特別指定選手として大学とプロでプレーする二足の草鞋を履くスタイルは、学生選手のリスクを低減できる可能性を秘めている。
そしてこの特別指定制度の利点にいち早く気付いたクラブは、この制度の恩恵を受けることになる。
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次回は松尾佑介がJリーグに与えた衝撃と地方大学サッカーが見せた可能性を紹介する。