率直に思いを伝えるオーストラリア流

隣の席のマチルダズのサポーターは20代女性。ピッチ上の選手たちへの愛の表現がストレートだ。

「〇〇選手、愛してる!」

「〇〇選手、パーフェクト!」

「天才!」

「私の可愛い人!」

大会初のスタメン出場となったエースのFWサム・カーが同点弾を決めると、どうだと言わんばかりに絶叫し、こちらを睨む。なぜかと思えば、私が青い服を着てきたからだった。

「しまった、きょうのイングランド女子代表のゲームシャツはブルーだった!」すかさず、こちらも「ゴー!マチルダズ!」と叫んで危機一髪で紛争を回避する。

白熱の好ゲームとなったが、欧州王者のイングランド女子代表は地力で上回る。2点目、3点目……追加点を重ねる。力強いサッカーだ。競り合いでマチルダズの選手が倒れる。笛が鳴らない。場内は大ブーイング。そして、すぐ横から絶叫が聞こえる。

「レフリー!試合見てるのか!」

オーストラリアで生活する日本人に聞くと、こちらの若い世代は性別に関係なく、人に迷惑をかけない範囲で自由に発言する。日常生活でも仕事でも、日本でみられるような、過剰に周囲の目を気にして行動を躊躇することは少ない。

周囲が個人の行動や考えに日本ほど干渉しないからだ。それはスタジアムの中でも同じ。思ったことには素直にリアクションするのがオーストラリア流の応援だ。