斎藤佑樹「これがスタンダード」
今回の甲子園で解説を務めた元日本ハム、早稲田実業高の斎藤佑樹氏は「早稲田の応援も相当すごいですが、慶応の応援もこうやって聞くと、改めてすごい」「これがスタンダード」と慶応の応援は彼らの中でのスタンダードであることを説明した。
何故、慶応の応援があれだけの大人数になるかは理由がある。
1つは慶応校がマンモス校で2000人以上の生徒が在籍しており、単純に在校生とその保護者が応援に行くだけでアルプススタンドが埋まってしまうほどであること。
次が、「慶応」ならではの事情だが、チアリーディングを担当していたのは系列校の慶応女子高、ブラスバンドを担当していたのは同じく系列校の慶応志木高のOBであった。
同じように大学付属の高校であっても、東海大相模高校の応援に東海大甲府高校のOBが応援にいきトランペットを吹くというのはあまり聞かないだろう。
しかし、それが慶応のスタンダードだ。小学校、中学校、大学生、そして系列校含めて全てが「オール慶応」という意識を持つ人たちが多いからだ。
慶応は何故ここまで応援に盛り上がる?慶応ならではの事情
慶應義塾は福澤諭吉が創立し、今日では幼稚舎(小学校にあたる)から中学、高校、大学と設置している。
系列高は、付属校という言い方はせず『一貫教育校』と呼んでおり、どこの段階から入っても大学までは99%とほとんどがストレートで進学することができる(一部他大に行くものもいるが非常に少なく、慶應義塾女子高校でも95%が慶応大学へ進学する)。
こうした点では、今日では早稲田なども同じような仕組みをとっていて珍しいことではない。ただ早稲田は例えば早稲田高と早稲田佐賀の内部進学率が50%程度となっているなど、系列校によっては上へ行けない。慶應の方が全体の内部進学の%が高いのは魅力になっている。
慶応の面白い点としては、『中学、高校と1つの校舎で学ぶ中高一貫校ではない』ことだ。
中学が普通部、中等部、湘南藤沢(SFC)、ニューヨーク学院、高校が慶応高(塾高)、志木高、湘南藤沢、ニューヨーク学院、女子高とそれぞれに分かれていて、進学の際に分岐する。
例えば中等部からは男子は志木高、塾高への進学組がいて(筆者が在籍していた当時はSFCへの進学も可能であった)、女子は女子高へ進学する。そして、また大学でも学部選択の自由がある。
それは、学校が分かれてもそれでさよならというわけではない。途中で学校が変わっても気の知れた仲間たちであり、大学などで再び合流するからだ。
もっと言えば、部活動などでより密接な関係になる場合も多い。特に今回、チアリーディングを担当した女子高と男子校である塾高は仲の良い関係にあり、恋愛関係や友情関係が作りやすくなっている。 さらに、その関係は大学以降、社会人になっても続いていく。決勝で吹奏楽を志木高OBが一部担っていたことは内部的には当たり前に支えあう関係となっている。
特に小学校にあたる幼稚舎は、内部の中でもとりわけお金があったり親が有名人であったりとお坊ちゃん・お嬢さんという認識は強い。そして、6年間同じクラスで鉄の結束を持つ。今回の慶応高校の森林貴彦監督は幼稚舎で小学3年生の担任をしながら、系列校の慶応校で指揮をあたるに足の草鞋を履いていた。
そのため、森林監督から教えを受けたというOB・OGの中には芸能人や女子アナウンサーも含まれていて、応援にかけつけていた。