今後防止策を検討し、講じる方向
現在、世界のサッカーでもアクセシビリティ対応が積極的に図られています。国際サッカー連盟(FIFA)は、FIFAワールドカップカタール2022において全64試合でアクセシビリティ対応の観戦シートを提供。また、ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)に加盟する各国連盟/協会、クラブチームを対象に「アクセス・フォー・オール(スタジアムのガイドライン)」を推進しています。
スタジアムは若い人ばかりではありません。初めて来られる人もいるでしょう。障がい者の方や高齢者、子どもも観戦しており、万が一、彼らに危害が及んだ場合、大きな事故になりかねません。さらに言えば、今回のケースは負傷者や死者を出すような重大な事故を引き起こす危険性も孕んでいました。
全ての試合――特にプロスポーツの興行においては、円滑で安全な運営がなされ、観戦者が安心してサッカーを楽しむことができるだけでなく、選手や審判員、チームスタッフ、警備員、関係者らがそれぞれ与えられた仕事を全うできる環境が確保されて初めて成立します。その中でサポーターは、試合や観客を盛り上げ、選手に大きなパワーを与えてくれる重要な存在であり、ひいては、サッカーの社会的価値やスポーツビジネスの発展といった観点からも欠くことができない存在です。
人と人をつなぎ、多くの人々と感動や歓喜、時に悔しさなどを共有できるのがスポーツです。また、インテグリティ(誠実、健全性、高潔さ)が保たれ、誰もが安心して安全に楽しむ環境があってこそスポーツは発展していきます。一部の人たちの身勝手な考えや一時的な感情に任せた危険行為によってそれを楽しむ人の生命や心身の安全が脅かされたり、スポーツ/サッカーの価値がおとしめられたりするようなことがあっては断じてならないのです。
今後、このようなことが二度と起こらないよう、JFAとしてもJリーグやWEリーグをはじめとする各リーグや連盟、47都道府県サッカー協会などと連携して再発防止策を講ずるとともに、リスペクトの推進や暴力・暴言根絶の啓発活動など積極的な情報発信を行ってまいります。そして、技術委員会、審判委員会、リスペクト・フェアプレー委員会、ウェルフェアオフィサーらと試合運営管理規定など各種規則の見直しを図る一方、運営・警備体制を強化します。
また、違反行為を犯した者に罰則を与えたり、今回のような決定を下したりするだけでなく、われわれももう一度、襟を正してスタジアムの安全確保について真剣に考え、防止策を講じていきます。
JFAはいかなる場合でも暴力や暴言、差別などを容認せず、全ての観戦者が安全に安心してサッカーを楽しめる健全なサッカー環境を広げていきます。本気で変えるには一人一人が当事者意識を持つことが重要です。このサッカー界の考えや取り組みが、いずれは日本のスポーツ界や国際社会にも良い影響を与えるものになるよう、サッカーファミリーの皆さんと共に考え、日本サッカーを統括する団体としての使命感と責任を持って取り組んでいく覚悟です。
浦和は今月3日に暴徒化したサポーター77人の処分(1人が16試合、31人が9試合入場禁止、45人が厳重注意)の決定を発表している。
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今後浦和の動向も含めて、注目されるこの事案。群衆事故発生のリスクもあるため、JFA、Jリーグはこのような事態が2度と起きないように運営体制の強化や現行の防止策を見直す必要がありそうだ。