ミラクルじゃない
決勝は反骨精神が結実した試合だった。富士大は今大会1回戦周南公立大(中国第2代表)に3-2の勝利を挙げるまで学生全国大会では未勝利だった。東北では仙台大の後塵を拝す形で長年No.2を強いられてきたため、富士大の総理大臣杯制覇を予想した人間は少なく、奇跡やミラクルと言われた。
だが、2得点目を決めた寺崎は浮かない表情を浮かべていた。
「準決勝に勝ってある記事を見たときに『ミラクル富士大』と書いてあったんですけど、そこは自分が納得がいかなくて。自分たちは戦術ミーティングをちゃんとやって、その中で相手の特徴、ウイークポイント、ストロングをどう抑えるか、そこをどう突くかというミーティングを行った結果、中京大さん、法政大さん、関西学院大さんに勝利しました」と語気が強い。
富士大イレブンは1回戦から堅守速攻のサッカーを貫き、格上と見られる強豪校との激闘を続けてきた。3回戦は豪雨の中、試合開始前に会場変更などのアクシデントも乗り越えてきた。それだけに、この優勝を奇跡やミラクルといった言葉では片づけられたくない。
「これはミラクルじゃなくて、自分たちがリカバリーやミーティングを行って、その中で自分たちがどうやろうと。監督たちのメッセージがチーム全体として分かったので、力になったと思います」と胸を張った。
これまで富士大は用意周到に準備をしてきた。天然芝のピッチで試合する際は天然芝の練習場で慣らし、人工芝での試合は人工芝ピッチで練習する。ピッチのサーフェスの適応まで気を配り、実戦に臨んだ。
それだけに戦った選手たちだけではなく、スタッフ、サポートメンバーの努力をミラクルと表現されたくない。彼らと真っ向勝負で戦った中京大、法政大、関西学院大の選手たちは富士大イレブンの勝負強さを認めていた。