指導者歴12年、審判ライセンスも持つQolyアンバサダーの仙太郎が分析する、注目の試合。
Qolyアンバサダーのコラムニスト、仙太郎によるレポートをお届けします。

今回は“試合を決めた一つのプレー”について、お話します。

前節、ホームで9試合ぶりに勝利を収めた鹿児島ユナイテッドFCが、大分トリニータとの試合でもその勢いを維持しました。大分からの多くのサポーターが襲来した大分戦を振り返ります。

序盤の戦術

前節からのスタメン変更は2人。広瀬選手とンドカ選手が外れ、戸根選手と藤本選手が先発しました。

序盤、鹿児島はGKやCBからのロングボールを多用しました。これはカウンターを避けて前半を無失点で乗り切るリスク管理の意味と、大分のDFラインを下げる意図があったと考えられます。大分のCBがスピードに欠け、ライン裏の対処に問題があることを見越した戦術でした。

GK泉森選手からのロングキックはあまりつながりませんでしたが、これは大分がプレスをかけて正確なキックを妨げたためです。CBからのロングボールの方が短い距離で正確性が高く、成功確率も高かったように思います。鹿児島はこの戦術でボールを前進させることができましたが、大分のプレス強度が高く、なかなかフィニッシュに持ち込むことができませんでした。

試合の流れを変えた決定的なプレー

前半の途中から、鹿児島は相手DFラインを下げさせてできた大きなライン間のスペースを活用し始めました。この戦術の効果が現れたのが、野嶽選手のパスから生まれた決定的な瞬間です。野嶽選手が絶妙なパスを藤本選手に送り、大分のCB 安藤選手が藤本選手を倒して一発退場。これが試合の流れを一変させました。

試合後半の展開

前半を無失点で切り抜けたことで、鹿児島は有利な立場を維持しました。また鈴木選手のゴールが決まり、大分がひとり少なくなる中で試合を有利に進めることができました。後半も鹿児島は高い守備強度を維持し、大分の攻撃を寸断しました。

大分トリニータの戦術と対応

大分の序盤はシンプルに鹿児島のDFライン裏を狙い、途中からショートパス主体に切り替えました。守備ではハイブロックを採用し、守備の強度を高めましたが、ひとり少なくなった後に失点しました。後半は441でディフェンスし、ひとり少ないにも関わらず、鹿児島陣内に押し込む時間もありましたが、70分に追加点を許し、さらに退場者を出して試合は終わりました。

試合の総評

浅野監督のもとで守備が改善され、前半に失点しないことが最近の好調の要因です。意図を持った攻撃ができており、野嶽選手の素晴らしいプレーが試合の流れを変えました。これで直近の5試合で2勝3引き分けとなり、降格圏から脱出しました。降格圏との差はわずか勝ち点1ですが、11位の徳島との差も勝ち点差3と射程圏内に入っています。混戦が続くJ2の残留争いですが、まだまだ高いテンションの試合が続きます。


ライター:仙太郎
東京都でU12指導者歴12年。C級コーチライセンス、4級審判員保持。
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