Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊によるレポートをお届けします。

16シーズンぶりの4連敗中となっている横浜F・マリノス。過密日程の犠牲者となり、疲労困憊ぶりが痛々しく、指揮官キューウェルの解任報道も出ている中で迎えるのは2位鹿島アントラーズ。マリノスにとってかなり厳しい内容になるかと思われた試合を振り返る。

前半のマリノス、重い動き

前半、鹿島がセットプレーで先制したがマリノスは鹿島と比べると運動量も身体のキレも違い、疲労困憊ぶりが見ていて痛々しかった。鹿島·名古へのマリノス·エドゥアルドのタックルも完全にファールに見えるもので、退場かPK宣告でもおかしくないほど。試合後のコメントでも鹿島·鈴木優磨は「前半に関しては、相手は何もなかったというのが正直な感想」と述べており、実際その通りだった。これは5連敗に突入する展開かと思っていたのだが、一つのプレーで全てがひっくり返ることになった。

早川友基のプレーで全てが変わった

前半AT、鹿島GK早川のクロス処理ミスが発生。こぼれたボールを天野が冷静にゴールへ流し込み、驚きの同点弾。この同点弾を献上したプレーで全てが変わった。

疲労困憊の中、リードされて下を向きながらHTにロッカールームへ向かうのと、幸運ながらも追い付いて前向きに後半へ挑むのでは雲泥の差である。

そして後半マリノスの出足の良さ。あれだけ前半は動きが重く走力が足りなかったのにも関わらず、そしてこの蒸し暑いコンディションの中で不思議なことに一気に身体が軽くなり、鹿島を圧倒。

後半すぐにCKからエドゥアルドのヘッドで逆転、71分にエウベルをPA内でフリーにするほどのパス回しに翻弄され追加点、96分には松原のクロスに飛び込んだ植中朝日のダメ押しで、まさかの4-1圧勝に至った。

この試合のポイントは鹿島GK早川友基。試合を壊した直接の原因、4失点、不安定なプレーに終止、様々な内容を踏まえて個人的に採点は4.5。

早川は精神的なショックがあったのか、その後も全く立て直せず、マリノス側もその早川を穴と見て、上から目線で狙い続ける展開に。

エウベルのシュートも鹿島の柴崎ら二人が寄せてコースを限定し、ニアだけをケアする中でニアを鮮やかにブチ抜かれたり、FKの場面では松原が直接ニアを狙ってきたり(結果的にサイドネット)、マリノスの選手は早川をかなり舐めているのが伝わる攻め方を露骨にやってきていた。

特に長い距離のFKで松原がニアを直接狙ってシュート撃ったシーンは、第19節:浦和2-2鹿島戦での浦和·武田英寿が長い距離にも関わらずFKでニアに直接叩き込んだシーンがよぎった。この試合に限っては精神的に普通ではなく、マリノスからすると絶好の狙い場、鹿島からすると途中で交代させてもおかしくないほどの出来だった。

試合後の補強·解任

この試合、マリノスの疲労蓄積は言うに及ばずだが、鹿島も決して身体が軽いわけではなく、むしろ後半になってガクッと落ちた。おそらく、スタメン固定で起用し続けてきている影響で、スタメン組の疲労がたまってくる時期であり、ポポヴィッチ采配によるものと思われる。

鹿島が優勝狙うにはこの夏の補強が重要であり、7/4マインツに海外移籍した佐野海舟の移籍金約7億円で、誰を獲るのかがポイントと見ていたが、7/15にベルギーのルーヴェンから三竿健斗の獲得を発表。これでボランチのポジションを穴埋めしたが、まだ予算的には残っており今後も吉岡FDの動きに注目している。

一方、マリノスは天皇杯の水戸戦、そしてこの鹿島戦、負けたら監督解任が一気に高まる連戦をPK戦勝ち、そして大逆転の大勝と乗り切って、解任の可能性を切り抜けたと思っていた。しかしこの2連戦の結果に関係なく、電撃解任が報じられることに。この試合から二日後の7/16、「7/15付でハリーキューウェル監督を契約解除」とのリリースがクラブ公式より出された。過密日程の犠牲者とも感じられ、同情する部分はあるものの、各メディアより「求心力の低下」、「内容に進捗が見られない」、「采配に一貫性は乏しい」等の厳しい評価が並び、劇的な大勝の後で解任に至った。


ライター名:中坊

紹介文:1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2023年終了時点で962試合観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米·ヨーロッパ·アジアへの現地観戦も行っている(本記事は一週間後、中坊コラムに転載します)。
Note:「中坊コラム」@tyuu_bou
https://note.com/tyuu_bou
Twitter:@tyuu__bou
https://twitter.com/tyuu__bou

【厳選Qoly】日本代表復帰の伊東純也、中国戦で大活躍後の一問一答「本当に悔しい時間もありましたけど…」