大当たりの夏補強で勢いづく山形
J1昇格POを争うチームの中で山形は、攻守ともに隙がないチームを形成している。クラブ新記録のリーグ戦8連勝で絶好調をキープしている最大の理由は、夏補強が功を奏したからだ。夏移籍期間に加わった大当たりの3選手の実力を明かす。
まず7月25日にJ1鹿島アントラーズから完全移籍で加入した元日本代表MF土居聖真が加入してから11勝1分1敗と好成績を出しており、土居個人もリーグ戦13試合4得点2アシストと結果を出している。トップ下に君臨する山形出身のチャンスメイカーは、「そこが見えているのか!?」といった盲点にパスを出せる優れた攻撃センスを持っており、DFラインをすり抜けるようなドリブルも健在だ。山形が求めていたピースとして中核をなしている。
そしてリーグ戦13試合7得点とゴールを荒稼ぎするFWディサロ燦(あきら)シルヴァーノの存在も欠かせない。6月20日にJ1湘南ベルマーレから完全移籍で山形に復帰してから点取り屋として先発に定着し、第31節ザスパクサツ群馬戦から第34節レノファ山口戦まで4試合連続弾を決めてチームを常勝へと導いている。ちなみにディサロが山形所属時にゴールを決めた試合は14試合(J1昇格PO1試合を含む)の内13勝1分負けなしと不敗神話が継続中であり、背番号90が得点を挙げれば勝利の女神がほほ笑むに違いない。
クレバーな守備を見せる高身長センターバック(CB)のDF城和隼颯(しろわ・はやて)は、負傷者が続出するディフェンスラインを支えている。DF熊本雄太が6月に全治約5カ月の大ケガで長期離脱となり、今季リーグ戦33試合先発出場の主力DF西村慧祐(けいすけ)が先月行われたトレーニング中に全治約3カ月の負傷を負った。8月13日に群馬から完全移籍で加入した城和は中々定位置を確保できなかったが、第34節山口戦から先発に定着。第36節ロアッソ熊本戦で決勝点となるヘディングシュートを決めて山形の連勝を継続させた。優れた足元の技術と187センチの空中戦の強さを生かした現代型CBが千葉を迎え撃つ。
この他に山形アカデミー出身のFW高橋潤哉(じゅんや)がリーグ戦34試合11得点3アシストとチームトップスコアラーとして活躍しており、途中出場から9ゴールを奪うすさまじい決定力でゲームチェンジャーとして期待されている。鋭いドリブルを持ち味とするMFイサカ・ゼインや高精度キックを武器にするMF國分伸太郎など既存戦力も優れた選手が多く在籍している。
控え層も実力者を備えており、既存選手と新加入選手が調和したことで攻守のバランスがJ2でも屈指の域に到達している。ホーム負けなしだった清水エスパルスを2-1の逆転勝利を収める力は本物だ。強固なブロックから相手のこぼれ球を回収し、即座にカウンターにつなげて土居がチャンスを創出し、ディサロや高橋がフィニッシュを決める。J2でも傑出しているカウンターを中心に、多彩な攻撃で千葉を打ち破りたい。
2季連続の最終節ジンクス
山形は相手からすれば恐怖のジンクスを持っている。それは最終節開催前時点の6位チームと最終節でホームで対戦した場合、山形が勝利を収めてJ1昇格POに進出が2季連続で続いているジンクスだ。
2022年シーズンは6位に位置していた徳島ヴォルティスが8位山形と最終節に対戦し、ホームで3-0の勝利を収めた山形が順位を6位に上げてPOへと駒を進めた。
翌2023年シーズンは6位だったヴァンフォーレ甲府が7位山形と最終節に激突。ホームで2-1の逆転勝利を挙げて5位フィニッシュでJ1昇格PO進出を決めた。
現在6位の千葉は条件に当てはまっており、最終節にホームで山形と対戦する。ジンクス通りであれば、山形が千葉から白星を手にしてJ1への挑戦権を手にすることになるが果たして…(これまで順位が上の相手を破って逆転でJ1昇格PO進出を決めてきたので、条件が完全に一致していない部分が懸念点ではあるが)。
【インタビュー】鹿島でキャリアを終える選択も、故郷帰還を決断。モンテディオ山形MF土居聖真が決断した移籍の経緯と新たな挑戦
ただ迷信じみたジンクスはまやかしといってもいい。これまで一丸となって戦ってきた選手、スタッフの努力によって後半戦の大躍進につながった。クラブ新記録の9連勝を達成して、J1昇格POでは勢いそのままに10季ぶりのJ1復帰につなげたい。
(文 高橋アオ)