ソニー仙台FC以外でプレーする選択肢はない
今年9月にソニー仙台FCの活動終了が発表された。56年の歴史を持つ東北のサッカーをけん引し、アマチュアサッカーの頂点にも輝いた名門チームが活動を終える。
ソニー仙台FCの選手としてのプライドを抱いて戦い続けてきた吉野主将は、チームの活動終了とともに現役引退を決意した。
まだ27歳と選手としてはこれから脂が乗る年齢だが、チームへの忠誠心、愛があってこその選択だった。
――チームの活動終了を知った際に、率直に思ったことを教えてください。
「率直に思ったことは、悔しい気持ちでした。(所属して)5年間あった中で1回も優勝できなかったので、このまま優勝せずに終わってしまうことが悔しいですね」
――何歳まで続けたいといった気持ちはありましたか。
「やれるところまではやりたいという思いはありました」
――これからという年齢でもありますから、悔しさしかないですよね。
「悔しいですし、残念だし、やり切れない気持ちです。ただ自分の中でソニー仙台FC以外でサッカーをする選択肢は1ミリもありません。見田さんにソニー仙台FCに加入させてもらって、恩返しという気持ちも込めて『絶対優勝する』という目標を掲げてやってきました。
他のチームでサッカーをすることは選択肢にありません。だからこそソニー仙台FCでやれるところまでサッカーをやって、優勝して辞めようと思っていました。その目標を達成できなかったことに悔しさとやり切れない気持ちになりました」
――その悔しさを抱えていくのでしょうか。それとも今後指導者などサッカーでその悔しさを晴らすビジョンを持っていますか。
「いまのところまったく考えてないですね。サッカーに携わることを考えていません」
――現役引退はソニー仙台FCへの忠誠心からですか。
「そうですね。ソニー仙台FCに加入させてもらったことが自分にとって本当にうれしかった。ソニー仙台FC以外のユニフォームを着ている自分を想像できませんし、想像したくないというのがあります」
――現役引退後はどのようなキャリアを歩まれますか。
「自分としては社業に専念して、サッカー以外の形でソニーグループに貢献したいと考えています」
――引退は寂しくなりますね。
「寂しくなりますね。松尾と(岩渕)弘人の試合を見に行きますね」
――キャリアを振り返って順風満帆でしたか。
「そんなことはないですね。きつい時期もありました。幸いというかうれしいことに5年間通して試合に関わらない時期はありませんでした。『絶対にメンバーに入ってやる』、『試合に出てやる』という気持ちは5年間ずっと毎日欠かさず、そのためにどうしていくか。週末の試合に向けてどうしていかなければいけないかというプロセスを考えることが自分の強みです。
考えることが強みの部分なので、やってきたことが結果に出ていることはもちろんですが、順風満帆かと言われると全然そんなことはないのかなと思います。優勝を目標に掲げてきて優勝できなかったので、悔しい気持ちのほうが強いですね」
――同期との対戦もありました。2021年シーズンのいわきFC戦は印象的でしたね。
「ソニー仙台FCのホームページにも載っていると思いますが、1番印象に残った試合の中でいわきFCとの試合を挙げています。JFLの2年目の後期のJヴィレッジでやったいわきFCとのリーグ戦を2-0で勝ちました。その試合はすごく印象強く覚えています。当時はいわきが首位を独走していましたが、いわきが来年J3に行くのは分かっていたので、自分たちが勝って『ソニー仙台FCには結局勝てなかった』という印象を与えたいということしか考えていませんでした。
(岩渕)弘人とも『これが最後の試合になるかもね』という話をしました。天皇杯でもチャンスはありましたが、リーグ戦でバチバチできる試合は最後かもしれないと話した中でモチベーションを高くやれました」
――あれは圧巻の試合でしたよね。
「むちゃくちゃ気持ち良かったです(笑)」
――嵯峨さんも悔しがっていたことをよく覚えています(笑)。あの試合は吉野選手にとってベストマッチだったと思います。
「そうですね。岩渕、嵯峨理久もそうですけど、(岩渕)弘人は大学生の時からずっと一緒で、1年生のときからカテゴリーもずっと一緒にやっていました。最初がBチームに入って、Aチームに上がりました。
特別身体能力が高いわけではなく、足が速いわけでも、上手かったわけでもない。『本当にお互い頑張ろう』と、一生懸命努力していろんなことを学ぶ姿勢を強みにしてやってきたタイプの人間です。そういう選手とJFLという舞台で真剣勝負を戦えたので、いままでのサッカー人生で1番印象に残った試合です」
――今季のホームHonda FC戦でゴロのクロスを入れて、決勝点をアシストして1-0で勝ちました。今季だと1番印象深い試合はホームHonda FC戦でしょうか。
「そうですね。今季左サイドバックにコンバートされてからアシストしたのは初めてじゃないですかね。あの試合はHondaさん相手にアシストを決めたことがうれしかったし、今年では1番印象深いですね」