「ピサノと大地はいいものを持っている」
強固なブロックを敷いて、ホームチームの攻撃をシャットアウトした名古屋は、DF陣を中心に2季連続J1得点王の横浜FM・FWアンデルソン・ロペスを徹底的に抑え込んだ。試合終盤にロペスが得点王の意地を見せてボレーシュートを放ったが、武田が迷うことなく右手を伸ばし、指先でシュートを弾く渾身の好セーブを披露。試合はそのまま2-0で終了し、Jリーグ杯王者は、来季へ弾みをつける白星で2024シーズンを終えた。
クリーンシートでの勝利に貢献したクラブ在籍9年目の最古参は「いつ(チャンスが)きても、『できるな』と再確認できました」と自信を深めた。
2016年に名古屋へ加入した武田。元日本代表GK楢崎正剛(せいごう、現名古屋グランパスGKアシスタントコーチ)ら、偉大な守護神を輩出してきたクラブで経験を積んだ男は、クラブの未来に目を向けた。
この日ベンチ入りを果たした高卒ルーキーGKピサノアレックス幸冬堀尾(こうとほりお)や、ともにトレーニングを積んだGK杉本大地について「ピサノと大地はいいものを持っている。ピサノはもっと経験を積んで、そのうえで来季はみんなで競い合えるように。しっかりと高め合いながら、(お互いに)レベルを上げていければいいと思います」とGKチームで切磋琢磨していく。
ランゲラックから託された「頑張ってくれ」という言葉を胸に、ゴールを死守した武田。背番号1の陰に隠れ、なかなか出場機会に恵まれなかった7年間だったが、互いに競い合った戦友との関係性は特別だ。
「キーパーというポジションは、そんなもんなんで。いろいろな考え方がキーパーの中でもあると思いますが、僕は(ランゲラックを)近くで見てきて、いい勉強になったと思っています。(今季最終戦に)勝利できて良かったです」
戦友をクリーンシートという最高の結果で送り出した。武田は名門クラブのGKとして、後輩たちへの想いを語りつつも、まだまだ最前線で闘う覚悟だ。来季に向けて37歳は「身体づくりをちゃんとして、自分を見つめ直して、ケガなくやっていきたい」と意気込んだ。
(取材・文 浅野凜太郎)