大きな修正ポイントは、最終ラインからのビルドアップにこだわらず、ボールロストのリスクを減らした点だ。

敵将の長谷川健太監督が「もう少しGKからつないでくるかなと思っていたけど、けっこうシンプルに蹴ってくることが多かったので、そこは割り切っていたと思う」と試合後に振り返ったように、ゴールキックを含めリスクを負わない姿勢が見て取れた。

特に印象的だったのが、51分30秒頃に守護神のヤクブ・スウォビィクが披露したプレーだ。名古屋が自陣でボールをつなぎ、FC東京の左サイド深くへと展開。このボールにスウォビィクが飛び出して対応したのだが、守護神はタッチラインへ蹴り出す形でクリアした。

相手アタッカーのプレッシャーが猛烈に厳しかった訳ではなく、味方につなごうと思えばつなげるシーンだっただけに、迷いのない判断が際立った。

対応したスウォビィクはシュートストップがストロングポイントである反面、足元の技術に優れるタイプではない。無理につないで相手ボールになるリスク(スウォビィクは大きく飛び出してゴールを空けており、相手ボールになれば失点の可能性が高い状況だった)を踏まえれば、スローインにしてプレーを切った方が理に適う。

この判断にセンターバックのエンリケ・トレヴィザンが拍手を送るなど、チームとしてリスクを負わない意識が統一されていたことがうかがえた。

また、名古屋戦を筆頭にチーム全体のハードワーク、強度の高い守備で相手に自由を与えない形が徹底されており、監督交代後はリーグ戦3試合連続で無失点という結果に結びついている。

0-0で引き分けた第20節・浦和レッズ戦の試合後に、この日も好セーブが光ったスウォビィクは以下のように要因を明かした。

「自分は最後の砦ですけど、守備は前線のディエゴ(オリヴェイラ)選手から始まる。みんなの構築が良い守備を生んでいると思うので、これを続けられるようにしていきたいと思います」

監督交代後は守備の強度および集中力がアップし、第17節・G大阪戦で失点につながったスローイン対応(集中力が一瞬途切れ、相手選手にフリーでクロスを上げさせてしまった)も改善されている。

守備の安定は指揮官の指導が大きいと思われるが、ピッチ上の選手たちの意識改革も相当にあったはずだ。