称賛されるべきフロントの仕事ぶり

さらに見逃せないのが、バスケス・バイロンの移籍(FC町田ゼルビアへ)で生じたダメージを最小限に抑えたフロントの仕事ぶりだ。

かねてより優秀な若手有望株を抱える東京ヴェルディは、これまでも数多くの選手がステップアップの移籍を決断してきた。近年を振り返ると、畠中槙之輔&渡辺皓太(現:横浜F・マリノス)、井上潮音(現:横浜FC)、藤本寛也(現:ジウ・ヴィセンテ)、山本理仁&藤田譲瑠チマ(現:シント=トロイデン)らが移籍。

昨季終了後には守備陣の柱だった馬場晴也(現:北海道コンサドーレ札幌)とエースの佐藤凌我(現:アビスパ福岡)が、前述の通り今季途中の7月上旬にはバスケスが町田へ旅立っている。

特にバスケスの移籍は、同じく東京に本拠地を構えるライバルクラブ(しかも町田は首位を快走中)への流出というショックはもちろん、戦力的なダメージも当然ながら大きいものだった。

しかし、フロントは素早い対応で穴埋めを試みる。セレッソ大阪から中原輝を期限付き移籍で獲得することに成功したのだ。

切れ味鋭いドリブル突破を武器とするウィンガーの中原は、前所属のC大阪で今季リーグ戦16試合に出場。第21節終了時点で5位と好調なチームにおいて、決して出番に恵まれていない訳ではなかった。

ただ、今季リーグ戦ではすべて途中出場での起用だったこともあり、本人としては葛藤があったようだ。加入後の囲み取材では、以下のようにコメントしている。

「怪我なども少しありましたが、基本的にはメンバーに入って途中から出場することが多かったです。僕は途中から出場して残り時間で結果を出すスピードスターではないですし、僕のプレースタイル的にはスタートからプレーできた方が周りから良いイメージを持ってもらえると思っています。スタートから出場することにこだわっていますし、僕ももう27歳なのでこれからもう一段階上に行くためには(今季残り)半年間を途中出場で過ごすよりは、このチームに来て僕自身結果を出しながらヴェルディがJ1に昇格できるように取り組んでいきたいと思いました」

移籍への覚悟を示したのが、新天地でのデビュー戦となった第27節・ベガルタ仙台戦。さっそく右サイドハーフでスタメン起用されると、6分に先制点をゲットする。その後もハイパフォーマンスで攻撃をけん引し、チームの全4得点に絡む大活躍(1ゴール&2アシスト)を披露した。

シーズン途中での主力選手の流出というピンチがあったものの、的確な補強でチーム力を落とさないフロントの仕事ぶりは、称賛されるべきだろう。