ディエゴ・アルマンド・マラドーナ。サッカー界において“神の子“と呼ばれた伝説的存在の一人であり、言わずと知れた存在である。天才的なプレーは多くのサッカー少年の憧れであり、彼がアイドルだったと語るプロ選手は非常に多い。また、破天荒な人生は、現役時代のみならず引退した今でなおメディアを騒がせており、アルゼンチン代表監督として現場復帰した今も、その一挙手一投足が注目されている。
今週末、12日から彼をフューチャーした映画が封切られる。その名もずばり『マラドーナ』。公式サイトによれば、映画は「マラドーナの人生全ての側面を映し出す初めての作品」であるという。一見、よくあるドキュメンタリー映画の様な触れ込みであるが、実はマラドーナを見守ってきた者だけが気付く事のできる意味が込められているように思える。
マラドーナは真のスーパースターであった。15歳でのプロデビュー、ボカ・ジュニアーズ、バルセロナ、 ナポリ、ワールドカップ・メキシコ大会、神の手、5人抜きドリブル・・・。サッカー選手としてのキーワードだけでも、マラドーナは数え切れない程のエピ ソードを有している。
しかし、マラドーナの人生はサッカーだけでは語れない。コカイン使用による長期出場停止、イタリア時代のマフィアとの交友、ドーピング違反によるワールドカップ・アメリカ大会からの追放、アルコール依存症、肥満や薬物摂取による危篤説。悪童としてのダーティーなイメージだけでなく、チェ・ゲバラのタトゥーを入れ、キューバのフィデル・カストロ議長、ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領らとも親密な関係にあるなど、政治的な場で姿を見せる革命家的な側面も見せる。
さて、あなたは気付く事が出来たであろうか。「マラドーナの人生全ての側面を映し出す初めての作品」という言葉の意味にが持つ本当の意味を。マラドーナは己の人生の中でたくさんの「側面」を我々に見せてきたという事に。そう、マラドーナは「人生の全て」という1つの側面で語る事のできない存在なのだ。
映画通でも試写会に訪れたわけでもない筆者が記事として取り上げたくなるのは、マラドーナという不世出な存在が放つ特異な個の輝きに魅せられているからかもしれない。


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