カメルーン戦の勝利はアウェーで行われるワールドカップでの初勝利であり、「日本代表が真の意味であり、ワールドカップ出場国となった」という賞賛の嵐が日本列島を駆け巡っている。そんな中、更なる賞賛に値するのは、2004年のアテネ・オリンピックに参加した「アテネ世代」の面々ではなかろうか。1981年、1982年生まれで構成される彼らは、U-17ワールドカップへの出場権を獲得できなかった事に端を発し、前後の世代と比べて「谷間の世代」というレッテルを貼られてしまっていたからだ。
アテネ世代の一世代上の1979年、1980年生まれの世代は、「黄金世代」と呼ばれワールドユース、シドニー・オリンピック、ワールドカップ日韓大会などで華々しい成果を残し、ワールドカップドイツ大会にも主力として挑みました。それに比べ、アテネ世代は、前述のU-17ワールドカップに続く世代別の世界大会であるワールドユース、アテネでも成果をあげる事ができず、評価をさらに貶めてしまっていた。
サッカーにおいて世代別の世界大会は23歳で迎えるオリンピックが最後となり、以降は年齢制限の無いワールドカップに集約される。世代別のカテゴリで結果を残せなかったアテネ世代は、ワールドカップドイツ大会の選手選考においても黄金世代の壁を突き破る事ができず、24~25歳という選手として一番成長する時期にありながら駒野友一、茂庭照幸のみの選出に終わり、国際経験を積む事すら叶わなかった。もちろん、黄金世代がトルシエ・ジャパンから続く一貫した教育や日韓大会での成功体験により作られたイメージが強い事は否めず、アテネ世代が「谷間の世代」と呼ばれる事自体はレッテルと捉える論調もあったが、結果だけを捉えるならば致し方ないというのが大勢を占めていたのではなかろうか。
しかし、彼らは諦めなかった。カメルーン戦のピッチに立った先発11人を思い出して欲しい。田中マルクス闘莉王、駒野友一、阿部勇樹、松井大輔、大久保嘉人。5人のアテネ世代が先発メンバー入り。黄金世代であるシドニー世代は中澤佑二ただ1人であり、若さが武器の北京世代は2人である。そして、試合内容を今一度思い出してみよう。ロングボールに文字通り壁と鳴り続けた闘莉王。アンカーでボール奪取に務めた阿部。右サイドで堅実な守備と攻撃参加を見せた駒野。先制点のアシストと右サイドで起点を形成した松井。そして、数々の事件や低パフォーマンスによって「代表に要らない」と酷評され続けてきた大久保嘉人の献身的なパフォーマンスは、ゴールを奪いFIFAのマン・オブ・ザ・マッチに選出され本田圭佑よりも特筆すべきものであったと胃って過言ではない。得点シーンではデコイとなり、左サイドからはカメルーン代表を抉った。サミュエル・エトーのマッチアップはサイドバックの長友佑都よりも多く強いられたのではなかろうか。
もちろん、まだグループステージの突破が決まったわけではない。「初戦を勝利しただけ」と捉える方が冷静な見方であろう。しかし、日本列島を熱狂の渦に巻きこんだのはアテネ組の活躍であったのは紛れもない真実。「結果だけを捉えるならば」という考え方をする必要もないだろう。
日本代表の目標は「ベスト4」であるが、アテネ世代にはその過程でもう1つ果たしたい目標がある。それはベスト16で行われるF組通過チームとの対戦だ。F組は前回大会王者のイタリア代表と南米の強豪パラグアイ代表が勝ち上がる事が有力視されている。つまり、アテネ・オリンピックのグループDで対戦した2ヶ国のいずれかにリベンジする機会が巡ってくるのだ。アテネ世代にとっては是が非でも達成したい目標の1つであろう。もちろん、日本がオランダ戦、デンマーク戦で結果を残す事が先決ではあるが、その先に続く道程で「アテネ世代の逆襲」が遂行されれば、日本は再び熱狂の渦に巻き込まれるのではないだろうか。
まずは、次戦オランダ戦。逆襲に挑むアテネ世代に注目して欲しい。