それでもなお、彼らは間違いなく優勝候補の筆頭と言わざるを得ない。

規律と組織と何より結果を重んじるフェリポンのサッカーからブラジルらしい華やかさを期待することはできないが、一方で今回は前回大会の戦犯となったフェリペ・メロのような“愚行”を犯すような選手は見当たらず、感覚を頼りにしたチームにありがちな隙もない。

過去1994年大会のカルロス・アウベルト・パヘイラ体制も、2002年大会のフェリポン体制のチームも非常に堅かった。現代においてスペクタクルと結果を両立させることはそれほど難しく、世界最強のタレント大国が優勝のためにカウンターサッカーを実践しているという事実を我々日本人はよく認識すべきであろう。

初戦は難敵クロアチアで2戦目メキシコも苦手としている相手。開催国としてはやや厳しい組み合わせとなったが、このグループリーグを突破すれば以降はフェリポンが最も得意とするトーナメント戦となる。開催国の重圧や経済問題に端を発したワールドカップ反対デモなどの不安はあるものの、ブラジルが世界に誇る“セレソン”が勝ち進み勢いに乗ればまた、国民も彼らの背中を押してくれるはずだ。

『マラカナンの悲劇』から64年。ようやくこの悲劇を払拭する時が訪れた。

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