トッテナム・ホットスパーズ(昨季6位)【開幕戦、第3節観戦】

ポチェッティーノの改革に必要なピースが揃うか?

・Positive Aspect

ウエストハム戦、1人DFが退場してしまうという窮地にあってもDFで交代枠を使うことを避け、攻撃的な姿勢を崩さなかったポチェッティーノの姿勢は驚嘆に値する。今までのトッテナム指揮官と比べても、自らの色をしっかりと出していく指揮官でもあるため、選手たちが迷うことは少なくなるかもしれない。その攻撃的な姿勢が呼び込んだ新加入のエリック・ダイアーの決勝点も、上昇気流に乗るきっかけとなる可能性がある。また、組織的に前からのプレスを仕掛ける意識が高まっていることも特筆すべき点だろう。組織が完成してくれば、セカンドボールを奪ってのショートカウンターで相手の隙を狙うような場面も増えそうだ。また、前線を支えるアデバヨールが献身的な動きを見せており、そこへのロングボールという選択肢が生まれているのは大きい。

・Negative Aspect

比較的仕上がりが遅いような印象を受けたのはマイナス。チームがまだ戦力を絞り込めていない影響からか、個々のコンディションは本調子には遠い。また、ウイングに外に張り付くプレーよりも切り込んでいくプレーや、中央で起点になるようなプレーを求めていくシステムを志向するポチェッティーノと、現有戦力となるウイングのタイプが合っていないことも問題。そこをシーズン中に仕上げていく、という難しい課題に取り組んでいくことになるだろう。開幕戦ではフィジカルの強いウエストハムに狭いレンジでのパス回しを続けてしまったことで、奪われる場面が多いのも気にかかった。指揮官のスタイルに馴染みつつ、選手たち自身にも考えていくことが求められそうだ。第3節ではローズ、ダイアーのサイドバック陣が攻守両面で満足出来るパフォーマンスが出来ず。リバプール相手に正面から挑みかかり、プレーの幅が狭いことを露呈してしまった。戦術の浸透には時間がかかるだろうが、問題はそこまでをどう戦っていくかになりそう。

・New Player

エリック・ダイアー

スポルティングでもレギュラーを掴めなかったように、突出した長所がある訳ではないが、小器用な印象を受けた新加入のCB。CBからLSBにコンバートされながらも問題なくプレーをこなし、決勝点まで決めてみせた。冷静なプレーは評価出来るが、マンチェスター・シティのナスタシッチのように周りとの関係性で生きるタイプはプレミアでは評価されづらい点が不安要素か。それでも、その若さに似合わない落ち着きと汎用性には期待が持てる。若手抜擢に定評がある指揮官ポチェッティーノの寵愛を受け、化ける展開になれば。2試合目もしっかりゴールを決めてくれたようで、まさに波に乗っている。逆に3試合目はPKを取られるなど、期待されている守備面でも満足のいくパフォーマンスは出来なかった。能力は恐らく高いものの、トップレベルでは細かな弱点を露呈しそう。

・Key Player

クリスティアン・エリクセン

昨シーズンの攻撃においてチームを牽引したMFは、今季もショートカウンターを狙う攻撃陣の手綱を握ることになりそう。セットプレーでの抜群の飛び道具に加え、一気にチャンスを作り出すチャンスメイクも健在。より今季はボランチの位置に下りながらチームの組み立てを助けることが求められる可能性があるため、多少の意識調整は必要か。また、ポジションチェンジを繰り返さなければならない今季の戦術において、サイドでのプレーを求められてくる時間が増えるかも。

・Potential Player

エリック・ラメラ

もともと、内側に切れ込んだりしていくような動きは十八番。ポチェッティーノは間違いなく攻撃の核として期待しているだろう。ローマ時代はドリブラーとしてだけでなく、受け手としても素晴らしいプレーを見せていたように、本来のポテンシャルを発揮出来ればショートカウンターから得点源となれるはず。球離れが悪く見えたのは、昨シーズンの不調をまだ引きずっているからなのだろう。覚醒に期待したい。

ルイス・ホルトビー

溌剌した動きを見せたドイツ人MFは、3センターに近い形であればチャンスが与えられることも増えるかもしれない。中盤にアクセントを加える意味では面白いが、2センターでは攻守に物足りない部分も残る。残念なことにハンブルグのローン移籍が決定。

・Deadline Deal

バンジャマン・スタンブリ

フィオレンティーナも狙っていた守備的MF。献身的な守備に加えて、力強いドリブルでの持ち上がりに定評がある。ポテンシャル自体は十分なのだが、トッテナムが今夏指揮官ポチェッティーノの戦術の核として狙っていたシュナイデルランと比較してしまうと守備面で大きなクオリティの差が。プレミアにフィットし、いい意味でのサプライズとなれるか。