【要塞サン・マメス・バリア】

サン・マメスをホームとしているアスレティック・ビルバオにとってこれほど頼もしい〝味方〟はいないだろう。

先日、ヨーロッパ各国リーグの開幕戦の空席率を表したデータが話題に挙がった。トップは98.4%という驚異的な数字を叩き出したプレミアリーグ。その次がブンデス(93.6%)、リーガ・エスパニョーラ(75.4%)、セリエA(55.8%)。観客数減数が話題になっているスペインらしい数値であるが、サン・マメスは収容率が80%以上を出すスタジアムであり、この数字に並ぶスペインのスタジアムはサンチャゴ・ベルナベウやビセンテ・カルデロンぐらいである。常に多くのサポーターに囲まれて、戦える環境にいるアスレティック・ビルバオはホームで無類の強さを発揮する。

2013-2014シーズンにおいては、2014年1月29日のコパ・デル・レイ準々決勝アトレティコとのセカンド・レグまでサン・マメス・バリアの不敗記録は継続していた。リーグ戦に限定すれば、第24節のエスパニョール戦までサン・マメス・バリアは陥落しておらず、最終的にアスレティック・ビルバオの昨季のホームでのリーグ戦の成績は13勝2敗3分、とオトラリーガ勢(レアル・マドリーとルセロナ以外のリーガのクラブ)としては異例の数字を残すことに。

このホームでの無類の強さはサン・マメスから受け継いだものである。その証拠にプリメーラ・ディビシオンでのホームゲーム勝利数1位レアル・マドリー、2位バルセロナであるが、3位にアスレティック・ビルバオの名前が入っているほどだ。

サン・マメス・バリアは誇り高いチームとそのサポーターとともに〝次の100年〟へと動き始めている。今後も素晴らしきドラマを紡ぐはずである、このスタジアムを注視していく価値はあるだろう。 

【日本人はアスレティック・ビルバオでプレーできるのか?】

今やACミランの10番のシャツを身に纏ったり、インテル・ミラノといった世界有数のメガクラブで当たり前のようにプレーする日本人が台頭してきたことは一昔前では想像も出来なかったはずだ。そしてバルセロナやレアル・マドリーのカンテラに日本人が在籍して、日々世界中のエリート達と切磋琢磨している時代でもある。いつの日か日本人がカンプ・ノウやサンチャゴ・ベルナベウをホームとする日がくるかもしれない。そんな話がわりと現実味を増してきているのが現状だ。

しかし、アスレティック・ビルバオでプレーすることは日本人にとってどんなメガクラブに入団することよりもある意味世界一難しいかもしれない。

アスレティック・ビルバオというクラブは特別であり特殊である。多くの人がご存知の通り、クラブの選手を『バスク人』に限定する方針を採っている。バスク出身者のみでチームを構成するこの哲学は『バスク純血主義』と言われており、そのルールは100年以上守られている現状だ。

かつてレアル・ソシエダもバスク人だけでチームを作っていたが、フットボール界を大きく変えたボスマン判決後、その縛りが緩くなった。ラ・レアルは他の血を採り入れるように努めたが、アスレティック・ビルバオは誇り高い方針を一貫としている。

それでも外国人選手が在籍したことが無かったわけではない。1996年にビルバオ史上初の外国籍選手としてバスク系フランス人のビセンテ・リザラズが入団。しかしメディアやファンからのバッシングを受けて、僅か1年で退団という悲しい結末を迎えた。リザラズの自伝によるとバスク地方の独立を求める過激派テロリストグループのETAから脅迫されていたらしく、風当たりの強さは常人の想像を超えるものだったようである。

そして現在主力を担っているアイメリク・ラポルテはリザラズに続いて2人目となる外国人選手である。フランス南西部アジャン出身で、幼少期にフランス領バスクのバイヨンヌに移住。そこにあるアヴィロン・バイヨンヌFCの下部組織を経て、アスレティック・ビルバオのカンテラに入団したという経歴がある。

ここまでビルバオの歴史上、トップチームに在籍した2人の外国人について簡単に記したが、ラポルテのように厳密には『バスク系』ではない事例も存在している。

見出しにある問いについて書こう。日本人でもアスレティック・ビルバオでプレーすることは不可能に思えるが、実は可能である。

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