トレーニングメニューはその後徐々に人数を増やし、出し手側を含む形で「いかにして受けるか」の質にこだわった講習が続いていった。
風間監督の言う「背中を取る」ための細かい駆け引きの部分だが、そのメニューや感想を書いていくとキリがないので、スペイン代表の練習で見られた1シーンをピックアップしたい。
鋭いターンをしたのがイスコ(レアル・マドリー)。最後に強烈なシュートを放ったのがパコ・アルカセル(バレンシア)。後は誰だかよくわからないのだが、イスコのターン直前の動きからアルカセルのシュートに至る流れで見られた各選手のプレーが今回、特にフォーカスされた部分だった。
「動くのが良いことではなく、もらうことが良いこと」であり、大切なのは「どこでもらうかではなく、いつもらうか」。そのためには、体よりも頭が先に動いていることが重要で、出し手側には受け手の駆け引きに対応できるよう、選択肢を持つためのトラップ、コントロールが求められる。
ここは、日本代表のアタッキングサードでのいわゆる「アイデア不足」に通じる部分でもある。出し手として優れた選手、受け手として優れた選手というのはそれぞれ名前を挙げやすいが、両方を高いレベルで備えた選手は決して多くない。ましてや、W杯の舞台で日本がやろうとしていたようなサッカーを実行し、試合に勝利するための技術や駆け引き、精度を持った選手は、いたとしても片手で数えられるほどだろう。それゆえ、クラブでの“感度の高いプレー”をそのまま出していた大久保が浮いているように見えたのかもしれない。
「ポゼッション」や「カウンター」など、どのようなサッカーをするにしてもトラウムで強調されるような“こだわり”を身に着けているに越したことはないだろう。特に、子どもの頃からこういった意識を持ってプレーし肌感覚として身に着けることにより、どんな状況でもアイデアをしっかりとピッチで表現できる選手、そしてチームが増えていくように感じられた。