続いて登壇したのは、欧州サッカー連盟(UEFA)において主にステークホルダー(利害関係者)に関する各種戦略立案などに携わり、昨年から出向したアジアサッカー連盟(AFC)ではコンサルティングアドバイザーを務めているアレックス・フィリップス氏。
最初に、「アジアのサッカーは発展しているのか?」という問いかけを行った同氏は、ナショナルチームの人気が落ちているヨーロッパでUEFAが行っている施策について紹介。具体的には、W杯や欧州選手権(EURO)予選の権利をUEFAが一元管理する方式に変更したことや、EURO2016からの本大会出場枠拡大(16→24)、EURO2020の欧州各地13都市での開催などだ。
出場国数に関しては「チーム数の少ない方が競技面からすれば良いかもしれないが、増やすことで代表チームに対する関心のムーブメントを広げることができる」など、メリットとデメリットがある中での選択であったとコメント。話題のUEFAネイションズリーグも予選以外の親善試合への関心をより高めることを目的としている。
また、イタリアのセリエAに代表されるリーグ人気の低下に触れ、「何をすれば良いかは分かっていないが、何かをしなければならないことは分かっている」と危機感を強調。リーグを運営する各国協会との関係性は50年前とは比べ物にならないほど密接になっており、活発な情報交換により、欧州全体で技術(おそらく運営面や試合放映などを含む)の均質化を図っていると語った。
その後は、【情熱】【文化】【地理】など10項目でヨーロッパとアジアを比較。【マネー】に関して、「多すぎても、少なすぎても良くない。お金があれば選手を育成せずに買ってきてしまうし、お金が無いからこそ育成に力が入り良い選手が育つ」と話していたのが印象的であった。そして冒頭の質問へ。
「アジアのサッカーは発展しているのか。その答えは、もちろんイエスだ。だが、他の地域と比べると…?」という形で講演を締めている。
3番手は、開幕まで1か月弱に迫ったAFCアジアカップ オーストラリア2015の大会組織委員会を取り仕切るライアン・ヒーリー氏。
アジアカップの歴史とともに、今大会の特徴、初めて導入された会場ローテーション制(※同一グループ内の試合を各地で行う)などを紹介。現在、世界人口の半分以上を占めるアジア地域最大のサッカーイベントを観戦するため、約50万人がオーストラリアを訪れると想定しており、日本からの観戦者も4万5000人ほどになるだろうと語った。
アジアカップが次の2019年大会から出場国枠拡大(EUROと同じく16→24)、予選がW杯と統合されることについては、代表チームが日程を調整しやすくなる一方、大会の試合数増加によるレベルの低下、コスト増大、大会期間の長期化などデメリットにも言及。2015年大会を統括する立場から、ホスト国の負担が増しながらいまだに次の開催地が決まっていないことに疑問を呈しているように感じられた。