弱点を埋めるには。補強と現有戦力の活用。
最後に、この試合を受けての補強の必要性、現有戦力の生かし方のアイディアについて考察することにしよう。
リバプールがこの戦術を継続していく場合、必要なのは3バックの両脇をこなすことが出来る選手だ。サコーとトゥーレが、組み立てで覚束ないプレーを見せていた事から、ここに足下が上手い選手を入れることが出来ればボールを持つ上で大きなメリットになるだろう。特にマルコビッチをウイングバックとして使い続けることになれば、守備の弱い彼を補う意味でも、サコーのポジションが攻守における肝になる。そのポジションに実力者を補強することが出来れば、リバプールの新戦術は更に大きくレベルアップするだろう。
理想としてはサコー、シュクルテル、トゥーレ、ロヴレンのうちで好調な選手を左CB、中央のCBに起用しながら、右CBに新加入した選手を置くことだろう。
ラザル・マルコビッチの攻撃に安定感が無かったと見るのであれば、右ウイングバックを代える案もある。ダニエル・スターリッジが復帰、もしくはマリオ・バロテッリが復調すれば、チームの核になっているラヒーム・スターリングをこのポジションに移す手も考えられる。右で崩すことを優先していくなら、左ウイングに得点源となる選手を置いて使っていく手もあるだろう。そうなれば、現有戦力ではファビオ・ボリーニのウイング起用なども選択肢には入るはずだ。
また、安定感を生んだルーカスの起用は継続的に行っていくべきだ。ジェラード&ルーカスの組み合わせが、現状最も組み立てを安定させるものであることは間違いない。ヘンダーソンのエリア内への侵入を生かせないのは少し勿体ない気もするが、そういった部分はチームとして軌道に乗り始めてから、落ち着いて試していくべきだ。まずは現実的な安定を。そういった意味で、守備でも活躍出来るルーカスの起用は外せない。
アーセナルは先にも述べたように、前に出て潰しに行けるCBと、守備で活躍出来るMFが必要だ。怪我も少なくないコシエルニー1人に頼り続けることは難しいので、そういったタイプのCBは求められるだろう。
実際にアーセン・ヴェンゲルも「メルテザッカーとチェンバース」の組み合わせだとDFラインが下がり過ぎるということを危惧していたようで、本職はサイドバックのデビュッシーを中央で起用していたが、やはり本職の選手が欲しい。モンレアルやデビュッシーがある程度CBとしても計算出来るとはいえ、戦術的な判断力では彼らは本職の選手には遠く及ばない。部分的なプレーではCB並みのプレーをこなすことが出来ても、組織の中の選手としては機能しきれていないのだ。
守備的MFは補強で埋める手もあるし、レンタルから帰ってきた運動量のある守備的MFコクランを積極的に試していく手もあるだろう。DFラインの人数不足が解決すれば、チェンバースの中盤起用という選択肢も浮かぶ。しかし、他のポジションと比べると最も薄いのがこのポジションであり、フィジカルバトルが出来るアスリート型MFが入ることがあれば、チームとしての多様性も増す。
両チーム共に、間違いなくポテンシャルは十分。昨シーズン見せたように、爆発力が発揮されればチェルシー、マンチェスター・シティといった上位陣を脅かすことも出来るはずだ。では、どうやってチームを上昇気流に乗せるか。そのヒントが、この試合には詰まっていた。
シーズン後半での飛躍は、2人の指揮官の手腕に託された。「十分に得られたヒントをどう使っていくか」。それを楽しみにしながら、プレミアリーグの後半戦を観ていきたい。
筆者名:結城 康平
プロフィール:「フットボールの試合を色んな角度から切り取って、様々な形にして組み合わせながら1つの作品にしていくことを目指す。形にこだわらず、わかりやすく、最後まで読んでもらえるような、見てない試合を是非再放送で見たいって思っていただけるような文章が書けるように日々研鑽中」
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