「WBを浮かせる」こと。3バックのもう1つの意味。
4人を後ろに残し、より柔軟に中盤を組み立てに参加させる。3バックのメリットはそれだけではなかった。最も重要視するべきは、左ウイングバックであるラザル・マルコビッチのプレーだ。チームで2番目に多い9回のドリブルを仕掛け、攻撃の起点となった。
しかし、1つの疑問が浮かぶ。何故、ウイングバックの彼が9回もドリブルを出来るほどにマークされていなかったのだろう。その問いは、「3バックの言及されづらいメリット」と繋がっている。
まずは、マルコビッチがボールを持ったシーンを連続写真で見てもらおう。
まずは左CBのサコーが、相手の左ウイングを引き付ける。そして、ボールを左サイドへ。
ここではマルコビッチが、相手からのプレッシャーが無い状態でボールを受けることに成功している。
ここで何が起きているのか、図を使って考えてみよう。
水色の丸で囲まれている部分で、サコーが相手のWGを引き付ける。アーセナルの場合は、この選手がサンチェスだった。
そして、ポイントとなるのがCFのスターリングとRWGのコウチーニョ。彼らが右サイドバックの裏、白い四角形のスペースを狙うような動きを見せることで、右サイドバックのチェンバースを前に出すことを防いでしまう。そうすれば、右サイドバックが低い位置に残ることから、左ウイングバックのマルコビッチがフリーになれるという訳だ。
WBは相手のサイドバックとウイングorサイドハーフの間に位置取ることが出来ることから、相手の守備にとってエアポケットになりやすい。サイドバックが見るのか、サイドハーフが見るのか、曖昧な状態になりやすいのだ。サイドハーフが見ることになると攻撃の起点が低い位置にまで戻らされることになるし、サイドバックが見ると守備の選手が前へと引きずり出されることになる。
今回のリバプールは、それに加えて意図的に、前線の選手がSBを低い位置に残すことでWBへのマークを軽減した。
このようなスタイルを継続しながらクオリティを高めていくことが出来れば、守備において曖昧な部分も多いプレミアリーグで「相手の守備のバランスを崩す」ことの出来る大きな武器になる可能性もあるだろう。