どこからか、歌声が聞こえてくる。街の中心部へと歩を進めると、声はだんだんと大きくなる。通りの角に面したパブから、中心街の広場から、即興で始まる大合唱が響いてくる。どこからともなくサイレンも鳴り始める。コンクリートをリズムよく弾く、警官が乗った馬たちの蹄。通りを埋める車の列からは、クラクションが鳴り響く。

様々な音が重なる中で、それでも彼らは歌い続ける。街はまるで、これから迎える決戦へのエネルギーを蓄えているようだった。

サンダーランドのような小さな街では、普通の日曜に店を開けているところは少ない。皆、穏やかな空気の中でそれぞれの時間を楽しむのが、サンダーランドの人々にとっての理想的な休日だ。だが、ダービーの日だけは違う。午後4時のキックオフを前に、鼻を赤くした男たちが昼間からビールを呷っている。普段の姿を知る筆者からすれば、異様とも言える光景だ。

最凶のダービー。タインウェアダービーにおける1つの特徴は、サポーター同士の争いを防ぐ為の厳重警備であろう。中心街に向かう途中で、警察車両の大群が路地裏へと入っていく所を見た。次の写真が、駐車されていた警察車両だ。その列の先頭に向かうと、メトロステーションの入口。その横では、警察官たちがなにやら神妙な面持ちで会話している。警察官が持つ無線は、ひっきりなしに他のエリアの状況を知らせているようだった。