まるで炎が侵略する様に、アトレティコの赤は相手チームに襲い掛かる。まるで蜂の巣に手を突っ込んでしまったかのような、ドルトムントの黄色と黒が一瞬で押し寄せるゲーゲン・プレッシングと比べても破壊的で強烈なスタイルは、中盤で相手を削り続けた元アルゼンチン代表MFシメオネの現役時代を思い出させるかのようだ。
筆者は個人的に、アトレティコ・マドリードとシメオネこそが、ここ数年で最も畏怖すべきフットボールクラブであり、監督であると感じている。
アトレティコ・マドリードというチームは勿論強豪ではあったが、2年連続でCLのベスト8。昨年決勝にまで進出したことも恐ろしいが、それ以上に注目すべきは安定感だろう。
当然の様に今年も欧州のCL常連チームと肩を並べているアトレティコ・マドリードを見ると、シメオネという監督の偉大さを思い知らされる。ビッグスターを揃えるPSGがCLベスト8への進出に「時間が必要」「差がある」とコメントしている一方で、シメオネ率いる猟犬集団はその壁を2年連続で乗り越えてしまった。
今回は、「世界でも有数の守備を誇る強豪」と言われるほどに急成長したアトレティコ・マドリードを破ったレアル・マドリードの決勝点に着目し、一瞬のゴールシーンに隠された様々な技術について考えていきたい。
一体、このゴールの背後では何が起こっていたのか。
GKヤン・オブラクを中心にした世界レベルの守備陣を誇るアトレティコを破るためにレアル・マドリードが見せた世界レベルの技術を、少しだけ覗いてみよう。