右足でのパスに隠された技。

例えば、この状態でチチャリートにパスを出したいと考えた場合、自然なチョイスとなるのは左足のパスだ。左足でシュートを撃てるような位置にボールを置いているのだから、左足でのアウトサイドパスが考えられる。

また、もっと余裕があれば右足インサイドのパスが安全なチョイスだろう。

しかし、ロナウドが選んだのはインステップに近い位置にボールを当て、右足でのパスを出すことだった。

動画で見た方が解りやすいとは思うが、いくつか違った角度の画像を用意してみた。

このチョイスの意味はどこにあったのだろうか?

まず、最後まで相手DFにシュートを意識させることが出来ることだ。相手の意識は左足。シュートを打とうと振り上げられる左足に意識が向いている状況で、右足でのノーモーションに近いパスはどうしても読みづらい。

また、精度面も重要になってくる。チチャリートにボールを届ける上で、スピードに乗りながらのアウトサイドキックでは、なかなかボールを思ったところに届けることが出来ないリスクがある。

さらに、ボールを受けるチチャリートとしても、アウトサイドでのパスよりもインステップに近い形の方が受け易い。

自らは体勢を崩しながらも、足の甲だけはチチャリートに向け続けたパス出しは、「リボンのついた」パスの様に見えた。

クリスティアーノは、似た形でのアシストを2014-2015シーズンにもう一度だけ決めている。

これは苦し紛れといった感じもするが、内に切れ込みながら、逆足で体勢を崩しつつもタッチ。アシストに繋げるという意味では同じだ。

もしかしたら、何かのアイディアをここで得ていたのかもしれない。

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