童顔の殺し屋が見せたポジショニングの美。
チチャリートに注目すると、この得点はまた違った美しさを見せる。ロナウドがシュートを含みに持たせたことで、チチャリートには2つの選択肢が生まれる。
1つは、フットサルで「ファー詰め」と言われるようなポジションへの進出。
ポジショニング的には岡崎の、このゴールが少し近いかもしれない。GKの死角に入り込んでいく訳だ。
GKの背後に入り込むように、ロナウドからの速いパスを待つ選択肢。
そしてもう1つは、エリア内でロナウドを待つ選択肢だ。
ロナウドが内側に切り込んだことで、チチャリートの選択肢は「こぼれ球を狙う」ことと、「ロナウドのパスコースを確保する」ことへと絞られた。
ここでチチャリートが、時間から切り離されたかのように静止する。
DFがロナウドのシュートコースを塞ぎに行く、ということを知っていたからこその静止。
ファーサイドを塞ぎにいくDFに近づくのではなく、一度ロナウドに近いDFの方に近づいていったのも細かな気配りだ。彼がロナウドを警戒することで、ファーに張るよりも広いスペースが生まれることを見切っている。
これによって、チチャリートの周りにマーカーがいない状態が確保される。
更に、シュートコースも計算されたものだ。ロナウドがボールを持ったことで、ファーサイドへのシュートコースを消したDFと、中央を塞ぎに行ったGKの間。
ボールを受ける前からデザインされていたシュートは、あざ笑うかのようにゴールマウスへと転がった。
試合を決めるシュートに、威力は必要なかった。