ワンタッチ目に隠された、選択肢の提示。

強烈なシュートを得意とする世界最高峰のアタッカー、クリスティアーノ・ロナウド。

当然、斜めから入り込んでくる彼に対して、まず警戒すべきは破壊力抜群のシュートだ。

ワンツーを受ける直前。「左足のアウトサイド」でボールを触れる場面が訪れるが、ロナウドはこれを見送る。

ここで左足のアウトサイドでトラップし、そのまま左足で打ち込む選択肢があるにも関わらずだ。

アウトサイドでのチャンスを見送り、ワンタッチ目は右足で行われる。

利き足でのコントロールは当然精度を高める意味もあっただろうし、そのまま右へと流れていく選択肢を見せたという意味もあるだろう。

インサイドでのタッチは、アウトサイドでのタッチに比べて選択を遅らせることが出来る。

アウトサイドでのタッチとなれば、先に「次のプレーの数を狭めて」ボールに触れることになる。この状況では、それが一瞬のミスになりかねない。

だからこそ、「インサイドを使うことで、右へ抜けるコースを見せた」というのが1つの仮説だ。

実際、ロナウドのシュートセンスがあれば、狭い右からでもシュートを撃ち込むことは不可能ではない。強力な右足でのシュートというカードが、相手GKの足を止める。

ここでのプレーの意味は、右足でのシュートという含みを残したことだ。

外に抜けて、そのまま右足で撃ち込むコースを意識させたことで、GKはチチャリートに意識を向けることが出来ない。

そして、ドリブルの中で、右に抜けての勝負が困難と判断。ロナウドは急転換し、右のインサイドでボールを押し出し、突如左へと入り込む。

【次ページ】シュートを意識させるボールの「置き場所」。