1. 拡大路線にあるMLS

ニューヨーク・シティFCが在籍するのは、アメリカ1部リーグのMLSである。このクラブの正体を突き止めるには、まずMLSについて知っておく必要がある。

かつては「サッカー不毛の地」と言われたアメリカで、1996年に開幕したMLS。発足当時は10クラブで行われていた同リーグだが、2005年からチーム数の拡大が行われている。

チーム数については数年間隔で目標が決められており、2012年には19チームに増加。そして現在では「2020年までに24チームでリーグを行う」ということが決定している。

アメリカでは年々サッカー熱が高まっており、欧州各クラブのプレシーズンマッチが行われるのももはや恒例となった。今年もインターナショナル・チャンピオンズ・カップが行われ、バルセロナやチェルシー、PSGといったメガクラブが参加する。アメリカという土壌には商業的な可能性があるということだ。

そうした背景、あるいはMLSをめぐる現状に目をつけたのが、欧州の新興勢力マンチェスター・シティだった。

2. マンチェスター・CとNYヤンキースが共同出資

アブダビ・ユナイテッド・グループの買収以降、徹底したグローバル戦略を続けてきたマンチェスター・シティ。

世界中からトッププレーヤーを獲得し、エティハド航空と莫大なスポンサー契約を締結。数年前まではマンチェスター・ユナイテッドという強大なライバルにブランド力で大きく差をつけられていたが、近年では知名度や資産価値でも欧州最高クラスを保つことに成功し、ついには世界最高峰のプレミアリーグで優勝まで果たすようになった。

そんなシティは、アメリカ大リーグのニューヨーク・ヤンキースと資本提携を行っている。シティから見ればサッカーのアメリカ市場を、ヤンキースから見れば野球のヨーロッパ市場を睨んだものと思われるこのタッグだが、興味深いことに両者は「アメリカ」の「サッカー」に目をつけたのである。

ニューヨーク地域での新チーム設立を求めていたMLS側の意向を受け水面下で構想を練ると、2013年5月、シティはヤンキースとの共同出資でMLSとしては20チーム目となるニューヨーク・シティFCの設立を発表。2015年シーズンからの参入が決定した。

アメリカ経済誌『Bloomberg』によれば、ニューヨーク・シティFCへの出資比率はマンチェスター・シティ75-80%、ニューヨーク・ヤンキース20-25%。新チームの発足とMLS参入に費やした額は1億ドル(およそ121億円)とも言われており、両クラブにとっても真剣な投資であることが窺える。

なお、このニューヨーク・シティFCと同じく最近よく耳にするのが「オーランド・シティSC」であろう。

カカが在籍し話題となっているこのチームも、2015年シーズンからMLSに参入した新チームであり、これまで2チームが消滅したフロリダ州に誕生したフランチャイズチームだ。

ともに設立して半年も経っていないこの両チーム。「最近いきなり耳にするようになったなぁ」と思うのは、ある意味当たり前なのである。

ちなみに、この両チームの参入と入れ替わる形で、2014年限りで解散となったのが加地亮がプレーしていたチーバスUSAである。資金力にモノを言わせ新チームが勃興する一方、経営危機に陥り消滅するチームも存在するわけだ。

それでも、MLSの拡大については現在も進んでおり、2017年シーズンからはアトランタとロサンゼルスをホームとする新チームの参入が決定している。また、デイヴィッド・ベッカムもマイアミで新チームを設立する計画を発表しており、新チーム発足に向け準備を進めている。

【次ページ】最大のミッション―、それがスター選手の獲得