3. 必要だった「スター選手の獲得」
さて、そんなニューヨーク・シティFCがMLSへの参入に際しまず取り組んだプロジェクトが、スター選手の獲得であった。
戦力的な側面はもちろんのこと、クラブのプレゼンスや知名度を高める上でもスター選手の存在は大きい。MLB、NBA、NFL、NHLがスポーツの話題を独占するアメリカにおいてはなおさらのことだろう。
そして、チームの目玉として獲得したのが、ダビド・ビジャとフランク・ランパードだった。
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— New York City FC (@NYCFC) 2015, 7月 1
2014年6月2日、ニューヨーク・シティFCはダビド・ビジャの獲得を発表。ニューヨーク・シティFCにとって、1人目のプロ選手契約がビジャだったのだ。
当時32歳だったビジャ。2013-14シーズンはアトレティコ・マドリーに在籍し13ゴールをあげるなどある程度の結果を残しており、ヨーロッパのトップクラブでもまだまだ活躍できたはず。それでもニューヨーク・シティFCを選択した理由について、以下のように語っている。
ダビド・ビジャ
「自分のキャリアを思い出してみれば、常に自分自身を新しいターゲットへ向かわせる事に挑戦してきたし、これは自分にとって別の重要なゴールになる。
プレーすること、一生懸命やること、ゴールを決めること、そして、ニューヨーク・シティをリーグ最高のチームにする挑戦を通じて、MLSが成長し続ける事にトライしたいし手助けしたい。
クラブを形成する人々が自分に注目してくれた事を本当に光栄に思う。
出来る限りのことを尽くしたいし、更なる責任を理解しているし、自分への信頼に報いる事で自分の価値を証明したい」
挑戦、成長、責任―。
ニューヨーク・シティFCという新たなクラブのビジョンや野望に対して、きっとビジャは強い感銘を受けたはずだ。
ピルロも今回の移籍について、「僕にはイタリア以外でプレーするいくつかのチャンスがあった。しかし、ニューヨーク・シティFCを選ぶ時に迷いはなかった。チームを見に来る人々の情熱を見てね」と話している。欧州のビッグクラブとは違うパッションやチャレンジを、このクラブに感じたのだろう。
こうしてビジャを獲得したニューヨーク・シティFCは直後にフランク・ランパードの契約も実現させ、二枚看板を手に入れることに成功した。
ちなみに、ビジャとランパードがニューヨーク・シティFCと契約したのは2014年夏のこと。チームがMLSに参入する2015年シーズンの開幕まではまだ9ヵ月ほどあったのだが、ここで活きたのがいわゆる“シティネットワーク”だった。
マンチェスター・シティはニューヨーク・シティFCの他にも、オーストラリアのメルボルン・シティの経営にも参加している。そのため、MLSの2015シーズンが開幕するまでビジャをメルボルン・シティにローン移籍させたのだ。
そして、ランパードも大本営であるマンチェスター・シティにローン移籍。新チームへの移籍を実現させるだけでなく、新チームが発足するまで自分たちのクラブでプレーさせるという交渉術は見事である。その後、ビジャはMLS開幕月の3月からチームに加入しており、ランパードに関してはこの夏からチームに合流することが決定している。
他にもニューヨーク・シティFCは、アスレティック・ビルバオで長くプレーした実力派右サイドバック、アンドニ・イラオラも獲得している。そしてこのほど世界的レジスタ、ピルロの契約も勝ち取り、こうして注目を集めるようになったのだ。