1. 「J1・J2全試合生中継」という衝撃
見たい試合がTVで見られる――。
今では当たり前になっているそんな話が、実は少し前までそうではなかった。
Jリーグ発足から数年が経過し、地上波放送の各局はJリーグ中継から次々に撤退。創設時にはゴールデンタイムで放送されていたJリーグ中継は、CS放送へと主戦場を移した。
しかし、当時はCSチャンネルが一社で放映権を獲得していた時代であり、「各節1試合を生中継」というのが当たり前だった。ファンにとって、放送されるカードが必ずしも見たい試合とは限らない。
また、1シーズンごとにライセンサーが変更になるなど継続性もなく、「サッカー中継を育んでいく」という文化がなかった。
ワールドカップイヤーである2002年には『NHK』、『TBS』、『J SKY SPORTS(現J SPORTS)』の3社が新たな枠組みで放映権を獲得する。しかし、地域によって中継の有無が変わったり生中継が保証されていなかったりと、この頃のJリーグ中継は決して横断的なものではなかった。
そうした状況の中、『スカパー!』が革新的なサービスを提供する。
2007年、『NHK』、『TBS』とともに共同で放映権契約を結び、優先放送権を獲得。これによって、J1とJ2の全試合が生中継されることとなったのだ。
ここで注意したいのは、今の私たちにとって当たり前である「全試合生中継」という放送パッケージが、世界的に見ると決してそうではないということだ。
たとえばプレミアリーグは1シーズンで380試合が行われるが、英国のTVで生中継されるゲームの数は168。その内訳は『Sky Sports』が126試合、『BT Sport』が42試合となっており、なんと半分以上の試合がライブで見られないのだ。
全試合を放送するだけでも大変なことであるが、それらを全て生中継するというのは世界的に見ても圧倒的な規模なのだ。インターネット配信が台頭していない当時にこれだけの放送をしていたのだから、その衝撃はなおさらであった。
そして、圧倒的なチャンネル数を誇るCS放送局の『スカパー!』だからこそこうしたサービスを提供できたのである。『スカパー!』が地上波放送を駆逐したのではない。地上波放送が撤退したことで、『スカパー!』が手を差し伸べたのだ。
『スカパー!』がいなかったら、Jリーグの視聴環境は大きく変わっていたはずだ。
「見たい試合の生中継をテレビで当たり前に見られる」という幸せを、『スカパー!』は私たちに教えてくれた。