――今回のワールドカップは、列強たちが苦しめられている印象ですが、その理由はジャイアントキリングを狙う対戦国の戦術が当たっている点がありそうです。
当然、対戦国の「弁慶の泣き所」はどこの代表チームでも分析できているはずです。それはコロンビア対策を行うべき立場の日本代表も然りでしょう。
ただ、チームとしてそれをどこまで狙いにいくのか、また、狙いに行った際にチーム全体が実行し続けられるかで結果が大きく変わってきます。
「信じたゲームモデルを心の底から選手たちが信じ込めるか…」という表現が正しいかはわかりませんが、「考えること」と「実行すること」、そして、「実行すること」と「実行し続けること」は全く違いますからね。
――それが出来るチームが勝ち点をものにしてきているわけですね。
ドイツに金星を上げたメキシコはその代表格ですし、ブラジルと引き分けたスイスも同様。フランスとアルゼンチンを苦しめたオーストラリア、アイスランドも描いたゲームモデルを愚直に実践し続けました。
――メキシコがドイツを破ったゲームは一種の衝撃でした。
メキシコは「ドイツに勝つにはどうするべきか」に時間を割き、準備万端で臨んだ印象でしたね。
まずは、中盤をマンツーマン気味の配置。司令塔役であるボランチのクロースに対しても執拗にチェックし、そこからの「球出し」を断ちました。そして、ドイツの武器である両サイドバックの攻め上がりについても、きっちりとメキシコのサイドの選手が対応。まさにドイツの各ストロングポイントを封じにいった格好です。
「穴がない」と思われていたドイツが、土台から崩れていった感覚でした。
他にも戦術的なポイントはありましたが、結果として、ドイツはメキシコにしてやられた。
自分たちのサッカーを見失ったことで、無茶な攻撃が増えてしまい、ポジショニングバランスが煩雑に。カウンターに対してセンターバックの二人で対応しなくてはならないミスマッチが多発したことが最大の敗因かと思います。
メキシコはチャンスと見るやこのカウンターにエネルギーを注ぎ、最終的にはゴールまでに至ったわけです。
――上述で言えば、彼らは「ゲームモデルを実行し続けた」ということですね。
ただメキシコが結果に結びつけられたのは、その「実行し続ける」ということはもちろんのことですが、「選手個々のレベルが高かった」という点も触れないといけません。
たとえ、あのような戦術を仕掛けて、それがハマったとしても、最終局面についてはタレント力次第です。
メキシコの得点シーンで言えば、まず、ケディラの突進に対して難しい角度からエクトル・エレーラがボールを突いた。そして、そのこぼれたボールをエクトル・モレーノがすかさず正確な縦パス。そこにはハビエル・エルナンデスがしっかりとポストに落ちてきてボールを受け取り、ワンタッチでアンドレス・グアルダードとワンツーリターン。止めは長距離をランニングしてきたイルビン・ロサーノがメスト・エジルをゴール前で冷静にかわしてのシュートでした。
これら一つ一つのプレーに確実性と技術がありましたし、特に最後のロサーノのクオリティーは凄まじかった。欧州でもトップクラスの決定力の「さすが」と言わざるを得ません。