――話を戻して、二つ目の弱点についてですが、こちらのポイントは?

それはコロンビアの「攻撃を組み立て」における弱点ですね。

おそらく、日本戦で起用されるであろう、カルロス・サンチェス、アベル・アギラールの両ボランチはあまりポジショニングに工夫がなく、ターンする能力(ボールを受け取り前に向く能力)もやや欠いています。控えのジェフェルソン・レルマ、ウィルマール・バリオスも同様です。この能力については、日本のボランチ陣、柴崎岳、大島僚太のほうが勝っているでしょう。

そのため、彼らは前から圧力を受けた場合、そのプレッシングの回避を試みるよりも、後ろ向きのパスや横パスに逃げる傾向が強いです。となれば、なかなか縦にパスが入らないことにしびれを切らして、ハメスが下がってくるのでしょうが、彼がゴールから遠ざかることは日本にとってはプラスです。

さらに言うと、このボランチコンビは、そこまでボール扱いに長けているわけでもありません。

そのため、連動した守備をベースに、ボール奪取能力の高い選手が彼らから「狩り」に行けば、奪いきることは可能でしょう。長谷部の先発が濃厚かもしれませんが、ボールハントを考えると、山口蛍のほうがより好ましいです。

ちなみに、個人的には、山口と遠藤航を組ます形も対応策の一つとしては「あり」だと見ています。遠藤がいることで山口は遠慮なくボール奪取を仕掛けられますし、遠藤自身もデュエル能力は高い。ハメスに放り込まれたボールに対しても彼なら簡単に弾き返せますし、バイタルエリアにボールが運ばれるケースは減少するでしょう。

ただ、これまでそのコンビは一度も試されていないですし、西野監督は「ボールを握る」ことやカウンターを仕掛けた際にセカンドラインに詰めることをボランチに求めている印象なので、実際に起用されることはないでしょう。

以上のように「戦術」と「選手配置」の関係性については少々不安はありますが、日本がコロンビア相手にショートカウンターを仕掛けられるケースも十分に考えられます。

――ボランチがセンターバックにボールを下げた場合は?

パスコースを限定して、センターバックからボランチに入るパスを奪うイメージの守りがいいでしょうね。

もちろん、欲を言えば、そのままセンターバックまで圧力を掛けたいところです。

ですが、そこまでしてしまうと、日本の前線のスタミナ損耗が心配ですし、肝心な時にエネルギー不足に陥るほうが怖いです。

センターバックのダビンソン・サンチェス、ジェリー・ミナはそれなりのフィード能力を持っていますが、そこまで気の利いたパスを出せる選手ではないので、ロングボールに逃げさせても「OK」だと思います。

(先発が予想される)ファルカオ、ハメス、ムリエル、クアドラードについては単純な高さはないので、空中戦に持ち込んでも日本は勝負できますからね。

――つまり、日本側は前からボールを奪いに行くほうが良いという考えでしょうか?「後ろに引いて守る」という戦法も選択肢としてはあると思いますが。

守備ラインを下げて、ボールを奪うエリアを自ら後ろにしてしまうことは、今の日本とコロンビアの力関係を考えると非常に危ないと思います。

それでは、必然的にハメスがボールを持つ時間が増えてしまいますし、日本側で言うところのディフェンシブサードでゲームが進む時間が長くなると、いつかは破綻すると思います。

そもそも、日本は「ボールを持たせても守れば問題ない」という「籠城型守備」は得意だと思いませんし、現代表は試したことが皆無です。

2010年の南アフリカ大会のように成功した事例はありますが、あれは計画されていたことでしょうし、大会前にも試していますから訳が違います。

今のチームは、間違った守備戦術を敷くだけで自滅するのではないでしょうか。

――つまり、「可能な限り前から」ということですね。

そうです。そのため、先発もその戦術に適した顔ぶれが理想です。

トップ下を置かずに2トップの場合もあるかもしれません。ですが、パラグアイ戦での日本の守備陣形を見るに、4-2-3-1でも守備時は、DF4人+MF4人でブロックを作り、前の二人は相手DFやボランチを見て、パスコースを限定していく作業です。

そのため、2トップになろうと1トップになろうと、基本的に守備の方式は変わらないでしょう。

そして、とにかく大事なのは「無駄に引かない」という意識をチーム全員が持つことだと思います。

ハメスに対してもミドルサード(ピッチを自陣、中央、敵陣の三分割にした場合の中央エリア)からしっかりとプレッシャーをかけ、状況によっては「ファールでも良し」の守りを続けるべきです。

アタッキングサードに入らない限り、さすがのハメスと言えどもそこまで怖くはありませんし、直接FKを狙えない距離であれば、ファールを犯しても大きな問題はありません。

ブラジルに善戦したスイスは、ネイマールに対してミドルサードからしっかりプレッシャーをかけ、彼にリズム掴ませない守備をしていました。

ハメスもイライラしがちな選手ですので、スイスの「対ネイマール」を見習い、「エースを試合の外へ」に専念して欲しいです。

――どうやらハメスが故障により出場しないという話もあるようですが。

単なる陽動作戦かもしれませんが、彼が欠場した場合、日本にとっては少なからずプラスになることは間違いないでしょう。

ただ、その場合に代わりを務めるであろうキンテーロも強烈な個性を持っていますし、「全て解決」ということにはなりません。

また、コロンビアがトップ下を置く4-2-3-1を捨て、これまでにも試している4-4-2や4-3-3を選択することも考えられます。

基本的にはポジショナルプレーに乗っ取った戦術を敷くでしょうが、コロンビアの戦い方に大きな変化が起こる可能性があり、日本も少々混乱するかもしれません。