バルセロナの進化は「攻撃の起点」にあり

ただし、現在のバルセロナは試行錯誤しながらも進化しようとしているのかもしれない。

クライフが指揮して1990年から1994年までリーガ4連覇を果たした「ドリームチーム」は、他チームならトップ下の選手にゲームメイクを担当させる中、中盤の底に位置するピボーテ(ボランチ)のグアルディオラが担っていた。

そのグアルディオラが監督となった2008年以降の黄金時代には、ジェラール・ピケやラファエル・マルケスなどのセンターバックが攻撃の起点以上の役割を担う司令塔役を務めた。

実際、グアルディオラは試合途中にCB同士を交代することもよくあり、その理由について「攻撃のリズムを変えるため」と言葉にしていたほどだ。

そして現在、その攻撃の起点はさらに下がって、GKのアンドレ・テア・シュテーゲンとなっているのではないか?

未来のパスサッカーには、空中戦も必要?

ハイプレス戦術を採用するチームが増えたことで、バルセロナは中盤の選手にショートパスを繋ぎ続けるスペースが皆無になってきた。そこでGKのテア・シュテーゲンにバックパスする機会が圧倒的に増えているのだ。

しかし、単にバックパスを選択しているわけでもない。MF陣が中盤でのショートパスを諦めているわけでもない。

彼等は前線から人数を割いてプレスしてくる相手選手を誘い、相手チームの陣形を間延びさせるためにGKへバックパスをし、テア・シュテーゲンの高精度フィードによるロングパスを相手DFラインの前に出来たスペースへ送り込んでいるのである。「DFライン裏」ではなく、「DFライン前」に。

もちろん、テア・シュテーゲンからのロングパスは浮き球となり、空中戦となることも多い。だからこそ、昨季はブラジル代表のパウリーニョ、今季はチリ代表のアルトゥーロ・ビダルという屈強なMFを獲得しているのではないか?

もしかすると、「パスサッカー=グラウンダーのショートパス」という固定概念を打ち砕く必要があるのかもしれない。現在のバルセロナにはそんな近未来のパスサッカーの可能性を見出してもらいたい。