WESTを制したアンジュヴィオレ広島の組織的なサッカー

2016年シーズンのなでしこリーグ2部で最下位に終わり、チャレンジリーグに自動降格したアンジュ。さらに1年での2部復帰を目指した昨季はWESTで5勝3分7敗と負け越し、4位と低迷。『プレーオフ順位決定戦(5~8位)』で巻き返して総合5位となったものの、昇格をかける順位決定戦1~4位シリーズにすら進めなかった事態は屈辱的だったはずだ。

今季からは昨季ヘッドコーチを務めていた貞清氏が監督に昇格。2013年から2015年にはなでしこジャパンでテクニカルコーチを務めた貞清監督の下、堅守速攻を掲げてスタートした今季のアンジュは、開幕4連勝で首位を快走。

しかし、第5節からは2連敗と3連続引き分けの5戦未勝利。試行錯誤の時期を迎えるも、その直後の第10節から3連勝。波のあるシーズンを送っているようにも見える中、他チームの躓きもあり、2試合を残してWEST首位を確定させた。(最終成績:8勝4分3敗。)

昨季17点だった得点が20に微増したのみに止まりながらWESTを制した要因は、やはり“堅守”だろう。昨季の24失点からリーグ最少の12失点に半減し、完封試合も7試合を記録した。

堅守速攻と言っても、アンジュはただ自陣で引いて守るチームではない。実際、恒益奉実と川野紗季は、前に出てインターセプトを狙う積極的な守備が得意なセンターバックコンビ。その特徴を活かすためにも前線からのプレスは必要不可欠。もちろん、前で奪えないと判断した時には自陣にリトリートして<4-4>の守備ブロックを組むわけだが、「前で奪う」と、「引いて構える」2段階の守備のメリハリが効く完成度の高いチームだ。

学園型総合型地域スポーツクラブ=FC十文字VENTUS

対する十文字は、2017年初頭の『第25回全日本高等学校女子サッカー選手権大会』で初優勝を飾った十文字高等学校を運営する学校法人・十文字学園を母体とした学園型総合型地域スポーツクラブ。高等学校部からは、現在のなでしこジャパンでエース格になっているFW横山久美(AC長野パルセイロレディース)を輩出するなど、近年の女子サッカー界で多様な旋風を巻き起こしている。

そんな十文字は、2014年に学校のサッカー部とは異なるクラブチーム『VENTUS』を設立。VENTUSは昨季からチャレンジリーグにも参戦しており、いきなりのEAST首位でプレーオフに挑んだものの、1分2敗の未勝利で総合4位に終わっていた。

雪辱を期す今季はリーグ最多33得点(15試合)を記録した攻撃力を武器に、EAST2位。再び2部昇格が懸かる戦いに挑んでいる。