クロップが手を加え始めたビルドアップ
ユルゲン・クロップ就任から4シーズン目を迎えるリヴァプール。監督の継続路線が続くとマンネリズムに似たような空気感が漂うこともあるが、このチームには存在しない。それは選手の入れ替えだけではなく、戦術面でも常にアップデートを行っているからである。
そして、今季のリヴァプールの変化として必ず取り上げなくてならないのが、ビルドアップ時における異変である。
これまでのリヴァプールに関しては、正直言って、そこまでビルドアップに工夫を施すようなチームではなかった。
基本戦術として、ゲーゲンプレスをベースにした敵陣でのプレー進行、ボールを奪われてから即時奪回を目指すネガティブトランジションの強度で勝負してきたチームであるため、自陣後方からのビルドアップにそこまで大きな意味を成さないからだ。
よって、対戦相手に合わせての対策についても、後ろからいかにボールを繋ぐかではなく、プレス位置や掛け方に手を加える印象が強かった。
だが、2018-19シーズンの彼らは一味違う。
これまでのリヴァプールと言えば、DFラインからボールを組み立てる際にDFとMF間でのパス交換やパスルート確保に時間をかけず、シンプルに前線の3枚を使うシーンが多かったが、プレシーズンマッチから取り組んでいるものは「自陣からじっくりと好機を伺う」戦法だ。
まず、根幹となるアクションの一つは、セントラルミッドフィルダーの一人をDFラインに落とす形である。
言わずと知れた戦法の一つだが、数的優位を作り出すことにより、前からプレスを掛けられた際に自陣の深い位置でボールロストを発生しにくくさせる効果もある。
さらに、このアクションと同時にサイドバックが意識的に高い位置を取り、FWの両翼はハーフスペースの位置にポジション修正している点も大きい。
各選手が後方からボールを引き出しやすいポジショニングを取ろうとするため、ボールの流れもスムーズに進んでいる。
(この異種系としてフォワードの両翼が大外に張り、サイドバックが中寄りのポジションを取るパターンも夏のキャンプから試験していたが、こちらはまだ実戦では活用していない)
フィルヒル・ファン・ダイク、ジョー・ゴメスのようにボールを扱える選手を所有していること、さらにGKに「足技の宝庫」アリソンが加わったことで初めて機能した戦術とは言えるかもしれないが、これで明らかにリヴァプールの「引き出し」は増えた。
過去には前線からプレッシングをかけてくる対戦相手に苦心することもあったが、今後はより冷静に試合を進められることだろう。