「対カウンター」を考慮した戦術策

上記の通り、リヴァプールのビルドアップには明確な変化が起きているわけだが、このPSG戦ではさらに面白い現象が起きていた。

それは「ビルドアップ時にセントラルミッドフィルダーの一枚を落とす」というものから「ビルドアップ時以外にも必ず後ろに三枚を残す」という概念へと変化していたことである。

前者と後者の違いは文字では伝わりにくいかもしれないが、大きな違いは、前者は「ビルドアップ時に限定されているもの」である一方、後者は「ビルドアップ時以外(アタッキングサードへ侵攻した状態など)も含まれている」という点だ。

また、DFラインを作る三枚の構成も異なる。

前者はセンターバックの二人とセントラルミッドフィルダーの一人で作ることに対し、後者はセントラルミッドフィルダー以外だけではなくサイドバックがこの役を担うケースも想定されているのである。

さらに、この三枚を構築する際にセントラルミッドフィルダーが落ちるポジションは一般的な「センターバック間の間」ではなく「センターバックの脇」を基準点とし、サイドバックとのポジション移動をスムーズにさせている点も非常に興味深い。

このメカニズム(サリーダ・ラボルピアーナと呼ばれる戦術の一種)自体は物珍しいものではなく、これまでに様々なチームが採用してきているが、少なくともこれまでのリヴァプールにおいては見られなかったものだ。

プレシーズンマッチでは、アンカー適正の高いファビーニョの特性を利用して、アンカーのポジションからそのままDFラインの真ん中に落とす動きを頻りに行っていた。だが、センターバックの横へ意識的に移動させるパターンについては、少なくとも筆者の記憶にはなかった。

そのため、昨季から仕込んでいたものをブラッシュアップさせてきたのか、今季用にマイナーチェンジを施したかのは不明だが、仮にPSG戦を見越して準備してきたとするならば、クロップにはただ驚かされるばかりだ。