夢や妄想を語る
――サッカーと里山…面白い組み合わせですね。
中島:私自身は海外に住んで、東京で働いて、ここ地方都市に来て、何がこの国の閉塞感なのだろうと思った時に「夢がない」と。
すごく現実的な話かもしれないですけど、私は1990年生まれで、世間が言う「失われた20年」だったのが30年になるみたいな時代でした。
消費税が上がり、地下鉄サリン事件、ニューヨークの同時多発テロ、リーマンショック、秋葉原では多くの方が犠牲になる刺殺事件もあって、そして何より東日本大震災。
社会に不安を感じる中で、じゃあ何のためにこれから生きていくのかと。少なくとも不幸せになるために生きている人は一人もいないはずですよね。そうすると一人一人が面白いものとか夢を掲げる場所がないと、生き残っていけないと思います。
今治という町でみんながそれぞれ夢を持っていますが、私たちはその夢を応援し合える場所だったり、そういう人たちが集った時に心地いい心の繋がりができる場所というものを作ろうとしている。
その中心が、スタジアムとか里山という場所になればいいなと思います。
実際どういうものを作るのが良いのか、どうしたらそれができるのかをまさに今議論しています。日本で初めてバックボーンのない、大きな親会社が付いていない市民クラブが、民間の活力・お金をふんだんに活用して民間で運営して、この地域に根差していくというモデルケースにしたいと思っています。
補助金をバーンと使って建てましたとか、それを運営して赤字が出ても「税金だからいいじゃん」という場所じゃなくて。
地方都市の生存競争ってそんなに甘いものじゃないと思います。税金を垂れ流したって人口が減っていくわけですから税収は減っていく。そうなるといずれ改修ができないとかボロボロになるとか、そうなっていくと思います。
だからこそ、最初から「自分たちの町にある自分たちの施設」として、私たちが地域のみんなさんと一緒に支え合っていけるモデルを作らないといけない。
大きなチャレンジだと思いますけど、私たちが今治でできないなら他の都市でもできない。逆に、私たちができればいろんなところでできるはずだと信じています。
それは、たぶんホームタウンの人口規模とか地元企業のバックボーンの太さとかではなく、どれだけ夢に共感してもらえる人をゼロの状態から集められるか、そこに本気でトライしているかっていうことに挑戦できるかだと思います。
そこがないと、いくら岡田さんが言おうが、その周りにいろんな人が集まろうが、夢ない場所だったら応援したくないじゃないですか、単純に。
――今こうしてお話を伺っているとなんだかワクワクしてきます。
中島:私たちが大事にしているのは目に見えない資本なので、その最初の突破口って、ホラかもしれないけど妄想と夢を語るしかなくて。
面白い仲間が一人できたら、俺じゃあこれやってみようって動く。動いたらちょっとお金を出してくれる人がとか、俺じゃあポスター書くよとか、この小さなコミュニティからしかスタートできないんで。その最初は、夢とか妄想とか語ることかなと思います。