攻守両面のアプローチから課題を修正する現代型若手監督

※鈴鹿でも「岡山劇場」は健在の岡山一成コーチ(右から2人目)。ミラ監督と選手たち、サポーターを結びつけた。

ミラ監督は、「ボールを大事にするサッカー」を掲げたものの、特定のスタイルに拘りを持ったり、戦術を押し付けるタイプではなかった。

もともとスペイン時代は女子チームや育成年代の指導者を歴任した指導者であるため、「指揮官」というよりも「指導者」。選手たちとのコミュニーションを通して、チーム状況や選手個々の能力や自信にアプローチしながら的確な指導ができるタイプだ。そのうえで、「いろいろな監督の練習や試合、言葉だったりを見聞きし、研究している。

鉄壁の守備組織を構築しているディエゴ・シメオネ監督のアトレティコ・マドリー、ゲーゲン・プレッシングが根付いたユルゲン・クロップ監督のリヴァプール、多彩な攻撃を披露し続けているグアルディオラ監督のマンチェスター・シティなどなど。

そのなかから現在のチーム状況に役立つであろうモノを一つずつチョイスしている」と言うように、基本的なコンセプトは変えずとも、どんどん新しい要素を取り入れていく現代型若手監督の模範的モデルだ。

「シーズン前半戦の課題として、リスクを負った後ろからのビルドアップにミスが出てしまっての失点が多くありました。常にリスクを負うのではなく、それを回避するためのロングボールが必要であり、その使い分けが重要であること。選手たちにはそれを落とし込むために意識的に伝えていました」。

おそらく、これは7月下旬からの約1カ月の中断期間に取り組んだ部分だろう。

中断明け初戦の東京武蔵野シティFC戦ではDFラインからのロングボールが明らかに増えていた。しかし、その頃はまだ前線にロングボールを“放り込んでいた状態”であって、ロングボールが味方に通らないとチーム全体が間延びした状態なので危険なカウンターを浴び続けていた。

そこからチームは、中断前からを含めて4連敗を喫した。