分析官は「どうやってデータを現場に落とし込む」のか。

さて、それではおこしやす京都ACの分析官として活動している龍岡さんは、実際の現場ではどのようなスケジュールで動いているのだろうか。

「監督や選手より一週間前倒しで動いているような感じですね。今日も試合がありましたが(取材日:5月27日)、この段階では『そうか、今日はこの相手だったな』という感じです。分析官としては仕事が終わっているものですから(笑)」という。

二週間後の相手の分析を行い、そして試合一週間前の練習に向けてチームに提案する。その後スタッフや選手がピッチ上に落とし込む…という流れになるとのこと。

ただ、もちろん分析官が作り上げたインフォメーションや提案が現場の監督やコーチにすべて採用されるわけではない。

苦労して立案したものが採用されないとき、分析官はどんな感情を抱くのだろうか。自分のほうが正しいのに…という気持ちにならないのだろうか。その素朴な疑問に龍岡さんは笑ってこう返答した。「そんなことは絶対にないですよ!我々が出しているものはあくまで素材であり、それを採用するかどうかはすべて現場の監督次第なんです」

さらに、「むしろ我々のほうが、現場が必要とする情報や提案を出すためにアジャストしていかなければいけない。監督によって求めるものは変わってきますから」と、逆に分析の側が現場に合わせる必要性を強調していた。

では、ちなみに現在おこしやす京都ACで監督を務めている吉武博文氏はどんなものを求めているのだろうか?

「監督には大まかに分けて2つの性格があります。一つは相手のサッカーに合わせて作り上げる方。もう一つは『自分たちに相手を合わさせる』方です。もちろんそれぞれの監督によって割合が違うのですが、吉武監督は100%後者ですね」と龍岡さん。

続けて、「とにかくまずは自分たちのやるべきサッカーをすること。それに相手が対応せざるを得ない状況を作り出そうとしますね。ですので、我々もそこで必要となる提案をする。それが仕事なんです」と明かしていた。

ということで今回はおこしやす京都ACの分析官を務める龍岡歩さんに「JSTATS」の面白さ、ファンでも楽しめるデータの見方や注目どころを教えていただいた。

ただ龍岡さんは、「サッカーにおけるデータ分析はまだまだ発展途上」だと話す。競技の現場においても、そして一般のファンに向けての見せ方においても、これからまだまだ伸びしろが存在する分野だ。

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今回メディア向けに公開された「JSTATS」はあくまで計測されている数字の一部分に過ぎない。これからどのようなデータがファンに提供され、そして活用されていくのか、サッカーの分野における新たな注目ポイントになりそうだ。

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