関東学生MVPが挑む最後の決戦

大学サッカーの祭典“インカレ”が7日に開幕した。今季は関東大学1部MVPを勝ち取り、リーグ最多出場も果たすなど目覚ましい活躍を見せる司令塔に大きな期待を抱く師がいる。

決戦を控える山内に恩師の後藤雄治ヴィッセル神戸アカデミーダイレクターがQolyに手記を送った。

私が初めて翔のプレーを見た時期は彼が中学2年のときです。そのときの翔は技術的にしっかりしていましたが、まだ身体が小さくて線も細く、フィジカル的な優位性がなかったので、うまくいかないことの方が多かったように感じました。ただ将来性を感じさせてくれる魅力的な選手でしたね。当時の私はU-18のコーチだったのですが、翔のプレーを見て「彼はU-18に昇格させてほしい」と思ったことを覚えています。

実際に彼を直接指導するようになった時期は、彼がU-18に昇格してからです。毎日のように翔と接していて感じたことは、才能も持っているし、言うことも立派なんだけど、行動が伴わない、まだまだ幼いところでした。人並み以上の才能を持っているし、人並み以上になりたいと思っているのに、人並みのことしかやらない翔に苛立ちを感じていたことを覚えています。また彼はどこか自分に自信がなく、自分が代表に入って、プロになれる存在だと思っていない印象がありました。私は翔がプロになれる選手だと思っていたけど、肝心の翔自身がそれを信じていない。そこに難しさを感じていました。

まずは翔のマインドをセットする必要があると感じていたので、彼の覚悟を試すように、毎日のように考え方や行動の基準の低さを指摘していました。一切甘やかさなかったので、当時の翔は大変だったと思います。翔は徐々に頭角を現しはじめ、(育成年代の)日本代表に選ばれ、U-18Aの公式戦にも出場するようになり、高円宮杯プレミアリーグ2017での優勝や2018年のU-16アジア選手権での優勝に貢献する活躍を見せてくれました。ただ残念ながらトップ昇格の判断をいただけるまでに至りませんでした。

翔がトップに昇格できないとわかったとき、私は翔を筑波大学の小井土さんに預けたいと思いました。私は筑波大学蹴球部のことも、小井土さんのこともよく知っているので、筑波なら翔に足りないものを足せるという感覚がありました。小井土さんに「山内を見てください」とお願いしたことを覚えています。

トップ昇格が叶わず、クラブハウス内のトレーナールームで号泣しながら「他のチームを紹介してください」という翔に「筑波に行ったほうがいい。翔になにが足りないのかを筑波だったら気づかせてくれる。そこで成長して神戸に戻って来い」と伝えたことが懐かしいです。いまの翔を見ていると筑波大学や小井土さんに感謝しかありません。

さて、前置きが長くなりましたが、翔への期待は「日本をリードし、世界で活躍するサッカー選手になってほしい」ということです。まずはヴィッセル神戸で活躍し、リーグ2連覇に貢献できるように頑張ってほしいと思っています。ヴィッセル神戸には人並み以上の才能を持ちながら、人並み以上の努力をしている選手、また強烈なリーダーシップで周りの選手たちの基準を高めていける選手がたくさんいます。いまの翔なら酒井高徳選手や山口蛍選手のすごさを細部まで感じられるのではないでしょうか。

そういった選手を見本にしながらも甘えることなく、彼らを超えていけるように、誰よりも走り、身体を張り、勝利に執着する。そんな翔の姿を期待しています。安っぽいプライドをチラつかせるような姿は見たくないですね。

そしていつの日か、ヴィッセル神戸でキャプテンマークをつけてプレーしてほしいです。

と愛弟子にエールを送った。

関東大学1部MVP選手の新卒入団は神戸史上初であり、サポーターの期待が高まっている。山内は学生最後の全国大会で日本一を目指す。

――関東学生1部MVP受賞、最多出場(1年からの通算5864分出場)と活躍されました。

MVPはチームの成績が認められて選ばれたと思うので、チームメイトに感謝したいです。最多出場は今季実質のヘッドコーチが平山相太さんになりましたけど、入学してから3年間小井土監督の期間を含め、継続して我慢するところは我慢して使っていただいた印象を自分は持っています。その上で(賞を)もらったことなので、小井土監督に感謝しています。

ただ誰もがもらえる賞ではないので、うれしい思いもあります。1年のときから大きなケガもなくプレーできたことが(受賞の)理由だと思います。小井土監督に感謝したいです。

――大学最後のインカレを控えています。多くのサポーターが注目を受けている中で大学最後の全国大会への意気込みを教えてください。

チームとして(関東1部)リーグは優勝できて一つの結果は出ましたけど、インカレはまったく違う大会になります。去年は中京大に負けて自分たちは敗退しているので、リーグの成績は関係なく、他の地域から素晴らしい大学が出てきます。

まったく違う大会にはなるので、すごく面白い大会になると思います。筑波大が優勝と、前評判はもしかしたらあるかもしれないですけど、そんなことはないと思っています。1試合、1試合全力で戦っていきたいです。

もしかしたらそこで自分がプレーしているところを見てもらったら、「あんなサッカー小僧…ガキだったやつが」と、自分の成長みたいなものを神戸サポーターの皆さまには見てもらえると思います(笑)。

いま他の大学にいる神戸のアカデミーの選手も大学でそれぞれの試合に出たりと、結果を残してすごく頑張っています。ぜひ(神戸サポーターに)来ていただけるのであれば来てもらって、自分たちが成長した姿を見せられると思います。

Jリーグも終わりますので、是非お時間がある方がいれば、ちょっと横目に見てもらえればうれしいです。

――最後にファン・サポーターへのメッセージをお願いします。

来年から自分が育ったチームに戻れることが本当にうれしいです。ただ戻るだけじゃなくて力にならないと意味がないと思っています。自分の性格上、サポーターの皆さまともなにかしらの形で触れ合える機会があればと思います。まずはサポーターの方々に自分の力や選手として認めてもらえるように頑張りますので、応援のほどよろしくお願いします。

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神戸に帰還した“神戸の未来”は屈託のない表情で、大学最後のインカレ、来季J1挑戦の抱負を語った。恩師の後藤アカデミーダイレクター、小井土監督は山内の成長に歓喜しており、アカデミー時代から知るサポーターたちもさらなる飛躍を期待している。この記事を読んだ神戸ファンには、大学最後の大舞台で山内が駆け抜ける姿を目に焼き付けてほしい。

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