――優勝候補に挙げられているフランスの印象は?

点が取れない印象ですね。エムバペやデンベレ(ともにパリ・サンジェルマン)、テュラム(インテル)など個の力で点が取れる選手たちが揃っているのに、ここまでは点が取れていない。その背景には、欧州各国の守備の固さとGKのレベルの高さが影響しているのかもしれません。

今大会は4-3-3や4-2-3-1のシステムを採用しているチームが多いですが、守備時には5バックに可変して守ったり、そのまま中盤でガチっと嵌めて守ったりと、守り方がすごく洗練されている印象があります。強力なサイドアタッカーがいるときは、後ろの枚数を増やすだけでなく、前の選手たちもおりてスペースを消すといったやり方がかなり洗練されている印象は受けます。

一方、攻撃の部分ではウィングが非常に重要だと思っていて、ここで1枚2枚と剥がせると一気に相手の守備組織が崩れます。ウィングが中に入ってサイドバックが上がってくる形でも良いですが、どちらにしてもサイドで剥がせる選手がいるかどうかが重要かなと思います。

――GS全体を通して最も印象的なチームは?

スペインはやっぱり強いと感じました。ラミン・ヤマル(バルセロナ)もそうですけど、ニコ・ウィリアムズ(アスレティック)もすごい。ロドリ(マンチェスター・シティ)やペドリ(バルセロナ)といった真ん中のラインもそうですが、ウィングが強烈です。

現代のサッカーは中央のラインだけではなく、ウィングの部分で相手を剥がせるか否かはかなり重要だと思っています。その点でスペインの両翼は状態が良いなと感じます。

――今大会を通じて、日本サッカーが見習うべき点はありますか?

僕は守備の人間なので、ディフェンスのところに注目しています。先日、遠藤航(リヴァプール)と話す機会がありましたが、やはりボールを奪いに行くところに欧州と日本ではまだ差があるなと。

ボールを奪いに行くスピードと寄せる距離感が違う。奪うためにはボールホルダーの近くに行かないといけないけど、怯んで間合いを空けたらボールは取れないし、下がったらチームとして怒られるそうです。

ボランチが抜けていった選手についていく方がDFラインは崩れずにリスクは小さく済むかもしれないけど、欧州の選手はそこでDFの選手がボールを奪いにいく。自分のスペースを捨てて、後ろがマンツーマンになっても前に出てボールを奪いに行くといったリスクを負っている。

だからこそ攻撃的な守備になるし、見ていても面白いのだと思います。日本でももっとそういった守り方がスタンダードになっていくと良いなと感じています。

そこは“意識”と普段からの“習慣”が重要になってくる部分だと思います。一瞬でも躊躇したら間に合わない世界なので、日々の練習から徹底していくことが大事なんだろうと感じます。

――守備の話になりましたが、気になるDFの選手はいましたか?

イタリアのリッカルド・カラフィオーリ(ボローニャ)は、クロアチアのヨシュコ・グヴァルディオル(マンチェスター・シティ)が出てきたときのような衝撃を受けました。もちろんサイズもあるし足元も強くて守備は間違いないですが、左足でボールを前に持ち運ぶこともできるので注目しています。

現代のDFには、パスが出せることとボールを前に運べることが求められますが、僕はいつも言っている通り、DFはまず守れないといけません。その点でもグヴァルディオルやカラフィオーリはやっぱり守備もすごい。それがベースにあった上で、攻撃のタスクをあれだけこなせるのはすごいなと思いますね。