◎もしかしたら......でもやっぱり、だと......

そんな状況だったので、JFAハウスには多くの報道陣が集まりました。ざっと300人はいたでしょう。

もちろん、それまでアギーレ監督自身が10月1日の記者会見や12月4日の協会ヒヤリングで疑惑を全面否定していたので、恐らくその主張を再び訴えるだろうとは考えていました。しかし、万が一新たな展開が起きた場合、もし会見に行っていなければ「特落ち」です。なので、テレビカメラの台数も含め、通常の代表メンバー発表以上に注目された会見となりました。

そして、その内容はやはり全面否定。ところが、例のレバンテ-サラゴサ戦で監督の口座には金銭が振り込まれていないのかと質問されると、「スペインの弁護士のアドバイスにより答えられない、その話は裁判官か司法当局に答える」と繰り返します。そうすると、「私は落ち着いているし、自分を全く疑わない」と言われても、そうですねと納得するのは難しく。一方でもちろん、「疑い」だけで辞任を求めるのもおかしくて。

今回、協会と監督は誠実に対応しようとしました。この会見では冒頭の発言に続き、20人近くの記者からの質問に答え、約40分の長丁場を監督が通訳を介して一人で語りました。しかし、潔白と信じて欲しいアギーレ監督の願いと、疑惑は明快に晴れたと報道したいサッカーメディアの思いは、最後の部分で折り合わなかったように感じられました。

会見終了後、引き上げていく報道陣の間には、試合終了後の高揚感とは明らかに違った空気が共有されていました。

※この会見の質疑応答の書き起こし:

「アギーレ「汚点はまったくない」 八百長疑惑について潔白を主張」
(スポーツナビ 2014年12月27日 21時25分)
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/soccer/japan/2014/columndtl/201412270007-spnavi

◎リーガは本当にクリーンなのか?

そして、Qolyの読者の皆さんは、もしかしたらこの日の取材陣よりアギーレ監督に厳しい見方かもしれないと考えています。

監督は最初に「12年間、スペインリーグで指揮を執っていたが、(その間に)プロフェッショナリズムに反するものを私は認識していない」と発言しています(このテキスト自体は「スポーツナビ」で掲載されたものに準拠)。しかし、残念ながらQolyでは、世界各国で起こっている八百長やその疑惑についての記事も扱ってきました。そして、リーガ・エスパニョーラもその危険性からは逃れられないでしょう。

発足以来、まだ明確な疑惑が生じていないJリーグでも、暴力団対策と共に八百長防止には神経を尖らせています。そしてこのノウハウの共有が、東南アジア各国リーグとの協力では一つのキーポイントでもあります。

ガンバ大阪公式サイト
「交通安全&八百長対策講習実施」(2014年6月9日)
http://www.gamba-osaka.net/news/index/no/1798/

町田ゼルビア公式サイト
「Jリーグ・町田警察署の協力を仰ぎ、暴力団排除等講習会&八百長防止研修会を行いました」(2014年6月12日)
http://www.zelvia.co.jp/news/news-45052/

スポニチアネックス
「Jリーグ バンコクで八百長対策講習セミナー開催」(2014年10月4日)
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2014/10/04/kiji/K20141004009041340.html

これだけ世界中で問題が広がり、かつ日本よりもその実例が多いと考えられる欧州で長年指揮を執ってきたアギーレ監督が、スペインリーグの完全な潔白を主張するのには違和感があります。

そしてその危険性を認識していれば、それが自分のキャリアを潰すだけに、慎重の上にも慎重な対応をするのではないでしょうか。自分の銀行口座に不自然な入金があった場合、直ちに返金して、かつ弁護士や税理士に法的な証明を取ってもらえば、火の粉は振り払えたはずです。

少なくともその部分で、今回のアギーレ監督の対応は準備不足だった、後手を踏んだように見えます。

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