大久保嘉人が悩んでいる。約15年の現役生活において、ここまで苦しい時間を過ごしたことは決して多くないだろう。

悩める男もついに限界?

開幕節からここまで、彼に訪れた決定機は数えられる程しかなく、その限られたチャンスも全て逸失。3月11日に行われたガンバ大阪とのJ1第3節では、後半戦に訪れたPKのチャンスすら活かし切れずに3試合連続で無得点。試合終了後には、その込み上げる怒りを抑え切れず、自身のユニフォームをピッチに投げつけてそれを蹴る仕草をみせるなど、もはや我慢の限界にきているのかもしれない。

「万年優勝候補」と他クラブのサポーターから揶揄されることもあったFC東京。

その現状を打破するために迎えられた、日本人最高峰のストライカーのその背中は、今や“期待感”ではなく、“焦燥感”すら漂っているように感じる。

様々なメディアで取り上げられ、各方面でも議論を巻き起こした前述の“問題行動”には賛否両論あるが、彼がそのような行動に走ってしまったことに対し、いくらか理解を示す者は決して少なくないだろう。それ程までに、彼はFC東京のサッカーにおいて孤立しており、また、チームの歯車は噛み合いだす気配が一向に感じられない。

開幕節では前年の王者である鹿島アントラーズに完封勝利を飾り、第二節では大宮相手に2-0で勝利。2試合連続の完封ゲームをみせるなど、守備面では一定の手応えは感じられたが、一方の攻撃面は不振の一途。

ここまで、結果的にはゴールを奪えているが、チームで“崩した”というシーンはほとんど見られず、ロングボールでのシンプルなカウンターやセットプレー、はたまた個人のスキルで、なんとかゴールを重ねてきたのが正直なところだ。そして、その流れすら、先程の第3節ガンバ大阪戦で潰えた。終始、試合中に活路を見出せず、終わってみれば0-3での完敗。スコアだけ見れば、失点に目がいってしまうが、それ以上に、“攻撃のやり難さ”が随所に見られた試合であった。

髙萩 洋次郎
「最後のところでパスミスがあったり、選手間が合っていなかった。まだ今季は3試合目で、そこはまだまだ良くなっていくところだと思う。相手の守備ゾーンでもっとアイデアやコンビネーションを合わせていかないといけない。攻撃では距離を近くした方がいい場面と、スペースが空いていてゴール前に走る選手がいてもいい場面もある。そこを選手間で動きを合わせないといけない。攻撃のところはまだまだです」

大久保嘉人と同様に新加入組の目玉ある“韓国帰りの男”は、このように試合を振り返っていたが、その分析通り、選手間の“チグハグさ”が“攻撃のやり難さ”を生み、そして、その影響をストレートに受けてしまったのが、最前線に陣取る大久保嘉人であった。

果たしてこの事態を脱することはできるのだろうか。

きっと、篠田善之監督以下コーチ陣はもちろんのこと、選手達も各々様々な考えを持ち寄り、ミーティングや練習で模索を続けていることだろう。

「優勝を狙えるチームだったのにこのままではマズい・・・」

その焦りを現場はサポーター以上に強く感じているはずだ。

さて、繰り返しになるが、何か方策はないのだろうか。

今、彼らが攻撃面で抱える課題を解消するには様々なアプローチがあるとは思うが、筆者の見解としては「トップ下の確立」が一つの解決策であり、大久保嘉人が息を吹き返す要因にもなるのではないかと考えている。


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