・夢の終わり、英雄との別れ
夢のような日々はいつだってそう長くは続かないものだ。
アフリカネイションズカップは通常2年毎に開催されていたが、アフリカサッカー連盟は『ワールドカップと同年に開催することを避ける』ために、時期を1年繰り下げた。
同大会は1年後にも行われることになり、ザンビアは2013年の夏に行われるコンフェデレーションズカップへの出場権を手にすることは出来なかった。
ただ、連覇すれば話は別である。王者として望んだ2013年大会は、世界的イベントへの進出を賭けた戦いでもあった。
しかし――ザンビアの願いは届かなかった。
1年前とメンバーはほとんど変わらなかった。ところが、前回大活躍を見せサウサンプトンに引き抜かれていたエースFWエマニュエル・マユカは、イングランドで出場機会に恵まれず、調子を崩していた。
これによって深刻な決定力不足に陥ったザンビアは、最終的に優勝、準優勝に輝くナイジェリアとブルキナファソを相手に一歩も引かない戦いを見せるも、3試合でわずか2得点しか奪えず。
あと一歩が足りなかった。3試合3引き分けという結果で、グループリーグ3位。ザンビアは無敗のまま大会を去った。
その後行われたワールドカップ予選でもザンビアは涙をのむ。第1節のスーダン戦では敗北するも、後に相手の違反が発覚し勝ち点3を奪取。第2節ではホームで強豪ガーナを破る活躍を見せる。
しかし、最終節でそのガーナにリベンジを達成され、敗北。また、あと一歩のところで成功を収められなかった。
そして――英雄が去る時はやってきた。
ワールドカップ予選敗退決定から間もない2013年10月。フランス・リーグアンで最下位に沈んでいたソショーが、エルヴェ・ルナール氏に目を付けたのである。
フランスのトップリーグで監督を務める――特にプロ選手の経験がないルナールにとっては、それは“夢"そのものだった。
そして、ザンビアサッカー協会は「彼のステップアップを邪魔する訳にはいかない」と、快く英雄の旅立ちを見送ったのだった。